2017年、ジャーナリスト・伊藤詩織さんや人気ブロガー兼作家・はあちゅうさんが実名でセクシャルハラスメント・性暴力被害を告発。海外から始まった「#MeToo運動」とも相まって、日本でも大きな話題になった。しかし、男女問わず多くの人々がセクハラにノーを表明した海外と違い、日本ではセクハラを拒否する連帯の動きが大きくなりにくかった。なぜこの国では「セクハラにノー」が言いづらいのか。識者、体験者に話をうかがった。(取材・文/むらたえりか、編集協力/プレスラボ)

世界で広まったセクハラ告発
#MeToo運動とは

「セクハラ告発」運動が日本では海外に比べ広がらない理由

 SNSを中心に広まった「#MeToo運動」。この#MeTooというハッシュタグは、セクシャルハラスメント(性暴力)や性的虐待の被害者が、その名の通り「MeToo=私も」と被害体験を告白するために生まれた。

 #MeTooというタグが広まったのは、女優アリッサ・ミラノの呼びかけがはじまりだ。2017年10月、アメリカの映画プロデューサーによるセクハラ疑惑が報じられたことをきっかけに、同様の被害を受けたことがある人々に向けて「me too(私も)」と声をあげてほしいと、彼女が発信したのである。多くの著名人や一般市民が彼女の呼びかけに賛同し、世界的なセクハラ告発運動となっていった。

 日本では、2017年5月にジャーナリスト・伊藤詩織さんが準強姦被害を告発。同年12月には人気ブロガーで作家のはあちゅうさんが、上司によるセクハラ被害を告発した。この2人の勇気を支持したいと、政治アイドル・町田彩夏さんや若手実業家・椎木里佳さんらも自らの被害体験をツイッター上でつぶやいた。しかし、はあちゅうさんの告発から約1ヵ月が経ったいま、その声は徐々に小さくなりつつある。

 アメリカと日本の「#MeToo運動」の大きな違いの一つは、アメリカでは映像メディアに対する有名俳優たちの告発が相次いでいる一方で、日本の場合は、いわゆる「芸能界」からの告発がほとんど見当たらないことだろう。上記に挙げた伊藤詩織さんらは、現在基本的にフリーランスで活動している女性たちであり、組織に属していない。そこにも、しがらみを絶って告発を行うことの難しさが垣間見える。