週刊ダイヤモンド1月28日号から「ハゲタカ」シリーズ第4弾「グリード」が始まる。連載の大きなテーマの一つとなる「リーマンショック」について、あらためて振り返りたい。

 人間の欲望は果てしない。その欲望はこれまで何度も、実体経済を超えた熱狂的投機、いわゆるバブルを起こしてきた。

 1634年頃、オランダではチューリップの球根の価格が高騰し、庶民までもが取引に参加するようになった。しかし、3年後、球根の価格が急落しバブルは終わった。

 80年代日本で起こった土地や株式の高騰を例に出すまでもなく、バブルは崩壊して初めて、それが文字どおり、実体の伴わない膨張だったとわかる。しかし、それを何度経験しても、次のバブルが来れば、人は「自分こそはうまく乗り切ってやる」と信じ、再び熱狂にわく。

 人間の欲望が尽きない限り、バブル経済は繰り返される。ところが、2000年代に起こったそれは、過去とは少し様相が違った。人類の強欲(グリード)が、金融工学という魔法によって覆い隠され、その下で加速していったのだ。

「いずれははじけるかもしれない」という不安を打ち消すかのように、金融機関はリスクを細分化し証券化という手法で他人に押し付けた。

 細分化することでリスクは限りなくゼロに近づいたように見えたが、決してゼロになったわけではない。むしろ、実際には中身もわからずリスクを世界中にまき散らしていたにすぎない。だからこそ08年9月15日、米投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻して熱狂が終わると、野放図に拡散していたリスクの種によって、世界中がどん底に陥ったのである。

 その結果、米国を象徴する産業である、投資銀行と自動車メーカーのほとんどが破綻したり国の支援を受けたりしてかたちを大きく変える羽目になった。いまや世界各国の財政をも危機に陥れている。

 人間の強欲が生んだ100年に1度の危機、リーマンショックとは何だったのか。連載に備え、その要点をおさらいしてみよう。