国民の2人に1人はバイクを保有
ここで簡単にベトナムのバイク事情について触れておこう。
ベトナムには何台のバイクがあるか。ベトナムの交通運輸省が2017年に発表した数字では約4500万台となっている。人口が約9200万人だから、2人に1台はバイクを所有していることになる。
都市部になると保有率はさらに上がる。ベトナム国内最大の都市であるホーチミンシティは、人口が約800万人なのに対し、登録されているバイクの数は740万台を超えるという。休眠状態のバイクもあるだろうが、ほぼ1人1台に近い。例えば我が家は義母、私たち夫婦、12歳の娘、義弟の5人が住んでいて、バイクは3台ある。
ホンダはベトナムのバイク市場で70%という圧倒的なシェアを持つ。ホーチミンシティでは「ホンダ」がバイクを意味する一般名詞として使われているのは、日本でもよく取り上げられるので、ご存知の方も多いだろう。
「キミのホンダは、どこの会社製?」「僕のホンダはヤマハ製だ」という、笑い話のような会話も交わされている。
店頭に「Sua Xe Honda」(ホンダ修理)と看板が出ていれば、それは「バイク修理屋」のこと。もちろんホンダ車以外でも修理してくれる。不名誉な使われ方をしている例もあり、「ホンダガール(Honda Girl)」と言えば、バイクに乗って街を流している売春婦である。
ベトナムのバイク市場のシェア第2位はヤマハ。スズキとカワサキも現地法人がある。
実は3人乗りは交通違反
ホーチミンシティを訪れた人は、当地の「名物」である4人乗り、5人乗りのバイクを見て目を丸くされる。よく「あれは違反じゃないんですか?」という質問をいただく。違反である。
バイクは2人乗りまでだ。3人乗りが許されるのは14歳未満の子どもの場合に限られる。ただし運用はかなり柔軟だ。
大人2人と、明らかに14歳を超えていそうな子どもが乗っている3人乗りのバイクや、大人2人に子ども2人の4人乗りしたバイクが、何も言われずに交通警察の前に止まっている様子もよく見かける。
「3人乗りができる子どもは14歳未満に限定」という交通法規が厳密に運用されたら、市民の多くは生活に支障をきたしてしまうから、大目に見ているのだろう。
運転免許が取得できるのは二輪車も自動車も18歳から。ただし免許が要らない50CC未満の二輪車は16歳以上であれば運転できる。日本の国際免許は通用しないが、外国人でもベトナム国内用運転免許の取得は可能だ。
閑話休題。さあ、購入すべきバイクは決まった。次はどうやって購入するか、だ。

(文・撮影/中安昭人)
1964年大阪生まれ。日本での約15年の編集者生活を経て「ベトナムスケッチ」(現地の日本語フリーペーパー)の編集長として招かれ、2002年7月にベトナムへ移住。その後独立し、出版および広告業を行なう「オリザベトナム」を設立。 2000年に結婚したベトナム人妻との間に娘が1人おり、ベトナム移住以来、ホーチミン市の下町の路地裏にある妻の実家に居候中。
|
|