世界最大の民主主義国家は
そのコストも高い

 次に世界最大の民主主義国家という背景。私の知り合いの議員によると、国会議員の選挙運動にかかるコストが尋常ではない。下院議員選挙の一回当たりの運動費用は2億円ともいわれる。一人当たり国民所得が日本の20分の1のインドで、この金額は半端ではない。

 議員の結婚式ともなれば招待客は数万人ともいわれる。私の友人の議員は、結婚式で5万人のお客さんをさばくために、海岸にベンチを多数用意し、鍋に入った大量のカレーとお皿を置いておいたという。結婚式に代表されるように、動員数がケタ違いなのだ。よって、集会や街宣活動にも巨額の費用がかかる。

 このように地元活動や有権者のケアに莫大なお金がかかる。これをどこかで回収しないといけない。政治活動でチップという名の収賄を行わないと賄えないという。メディアも政治の腐敗を問題にするが、前述のごとく司法に長い時間がかかるわけだ。その間は推定無罪なので、事実を否定しながらの“やったもん勝ち”のようだ。

 インド人に言わせると、インドの汚職のいい点は、「あまりに贈収賄が一般的なので、金額が誰にでも想定でき、合理的な範囲である」こと。要求される額に相場があり、法外でないというのだ。

 知人のインド人実業家は「警察官にちょっとした違反を見つかると、相手はニヤリとするんだ。罰金なら5000ルピー取られるところだが、警官に500ルピー払えば、目をつぶってもらえる。違反を穏便に処理してもらうため、あきらめて1000ルピーの賄賂を渡したら、500ルピーのお釣りをくれた」という。

 インド政府は今、腐敗防止法と司法改革に懸命だ。これができたらインドの経済成長にはさらなる拍車がかかる。一方の中国は腐敗を迅速な厳罰をもって撲滅中だ。これだけの腐敗と遅くて高い裁判制度と未整備なインフラという、絡み合う三重苦を持ちながら、8%近い成長率のインド。インドの課題は、インドの可能性を輝かせているようにも見える。