厳しい経済情勢が続くなかで、企業経営者は様々な難題に向き合っている。とりわけ注力しているのが営業現場の活性化だろう。
しかし、十分な成果が出ているケースは少ないのではないか。思っているほど売上げが伸びない、営業現場の動きが鈍い、または動きが見えない――。そんな課題を抱えている経営者は多い。
では、どのように営業現場と営業活動を再構築すべきだろうか? そのための具体的なアプローチを提示し、多くの企業を成功に導いてきたのが横山信弘氏である。
横山氏はアタックス・セールス・アソシエイツ副社長として、営業現場の改革指導に豊富な経験を持ち、改革の方法論をまとめた近著『絶対達成する部下の育て方』(小社刊)も好評。営業改革のキーワードは「組織文化」「予材管理」「見える化」と指摘する横山氏が、経営者や営業マネジャーが抱きがちな4つの悩みに答えた。
「営業予算の達成は当然」
という組織文化が必要
Q1 最近の不況もあり、売り上げ目標に未達の状況が続いています。にもかかわらず、多くの営業が外部環境や商品のせいにして自分の仕事を変えようとしません。どうすれば行動を変えられるのでしょうか。
A 営業の仕事/役割をきちんと認識し、「営業予算の達成は当然」という組織文化をつくる必要があります。現状維持バイアスを取り除かなければなりません。
たとえば、「1ヵ月に100台の車を作ってほしい」と言われたら、注文を受けた人はそれを作らなければなりません。1ヵ月の間に想定外のことがあったとしても、「100台」を作らなければならない。それが仕事です。
「今月はいろいろと立て込んでいて、89台しか作れませんでした」「部品の調達がうまくいかなかったので、完成したのは94台です」という言い訳はビジネスでは通用しません。
同様に、営業の仕事は「目標予算を達成させること」です。それ以外にはありません。組織にとって何が当然のことなのかをハッキリさせましょう。組織には予算があり、その数字を稼ぐのが営業の仕事です。目標を達成できなければ、一年間仕事をしなかった、と考えるぐらいでなければならないということです。
そう言うと必ず、「予算策定時と外部環境が変わった」「同業他社も低迷している」といった反論で予算が達成できない言い訳をする人がいますが、その人は経営というものがわかっていません。会社の予算というのは企業が健全に存続するために考えて作られるもので、その予算が狂うことは経営者からするとあってはならないことなのです。
予期せぬ災害などにより、目標未達が避けられないケースもあるでしょう。しかし、それはあくまでも火急の事態であり、全力で回避に向けた努力をすべきものです。その努力も及ばず、ということもあるかもしれません。その結果は別として、重要なのは「目標達成は当たり前」として、すべての営業担当者が、目標達成のためにあらゆることに取り組む姿勢を持つことです。
私のコンサルタントとしての経験上、そうした組織文化がすでに備わっている企業は多くはありません。多くの企業では新たにつくらなければならないものです。組織には必ず「いまのままでいいじゃないか」という現状維持バイアスがあります。この障害を意識して取り除かなければ、「目標達成は当たり前」という組織文化は生まれません。
組織文化をつくる第一歩は「計測」です。たとえば、1年間、「どうすれば目標を達成できるか」を考えた「回数」をカウントしてみましょう。誰に何回相談したのかという「回数」も測定するのです。じゅうぶんな回数、「考え」もせず、「相談」もせずに環境や商材に責任を押し付けている営業がいるとしたら大変な問題です。組織全体の問題として、「目標達成が当たり前」ということに徹底的に焦点を合わせる必要があります。
目標は必ず達成するという認識が【当たり前の基準】として組織に定着していなければ、どのようなマーケティング戦略に取り組もうが、どのような情報ツールを導入しようが、人の行動が変わり成果を生み出すことは難しい。私はそう考えています。