発火点

 最近米軍が行った哨戒活動は、トランプ政権下では少なくとも5度目の南シナ海パトロールで、域内でも緊張度が高いスカボロー礁の海域を初めて通過した。

 かつて米軍が爆撃演習に使用したこともあるスカボロー礁は、2012年に中国が実効支配を開始。中国による過剰な領有権主張だとして、フィリピンがオランダのハーグにある常設仲裁裁判所に提訴し、同裁判所は中国の主張を認めない判断を下した。

 中国は昨年、フィリピン漁船にスカボロー礁周辺の豊かな漁場での操業を再び認めたが、両国とも領有権を主張し、中国側が近海に多くの船を停泊させている状況で、依然として発火点となり得ることに変わりはない。

 専門家や外交官は、中国が南沙諸島を拠点に軍事活動を強化するとみるが、スカボロー礁での建設に踏み切ると予測する向きはない。仮にそうすれば、許されない一線を越えたとして、フィリピンと歴史的同盟関係にある米国の怒りを買うと考えられている。

 中国は米国のパトロール航海を何年か「我慢」してきたが、実際の現地の状況は中国有利が続き、緊張状態は「大きく改善した」と、北京の中国人民大学アメリカ研究センターの時殷弘主任は指摘。

「これらの島、特に埋め立てや軍事拠点の建設が進んだ島は、依然として中国の手にある。トランプ氏には、現状を根本的に変えようという根気も勇気もないだろう」と、外交問題で中国政府に助言を行う時氏はロイターに語った。

(Greg Torode Philip Wen 翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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