チリには実はその両方がある。両方とはいっても大勢はクールクライメイトだ。特に沿岸部に近づくほどにその傾向は強くなる。訪問したのは9月初旬。南半球が冬から春に向かう季節。朝、ホテルの窓を開けると、ひんやりというよりも、より強い冷気が部屋に入ってくる。

 そういえばこの部屋には暖炉。ワインメイカーもセーターやウィンドブレイカーを着ている。緑に囲まれたヴァレーは薄いミルク色の朝霧が支配し、優しいモイストと新鮮な冷気が身を包む。

9 月、エミリアーナのスタッフたちはこのスタイル。軽めのダウンや厚めのカーディガンがこの時期の定番

 チリが面する太平洋は、寒流。南極に近づく南部のパタゴニアは氷の土地。そこを通るフンボルト海流は冷気をチリの大地へと運ぶ。沿岸部は小高い沿岸山脈があり、そこに海からの冷涼な空気が流れ込む。さらに、アンデスから海に向かう川がいくつも横切り、複雑な斜面を持つ谷が連続する。

 そこにブドウ畑とワイナリーが生まれるのだが、高くそびえるアンデス山脈というこれも冷涼な白銀の果てしなく続く「屏風」を背にする。朝夕の冷涼と日中の太陽。チリのブドウたちはその中でじっくり、健やかに、そして美しく育つのだ。

 冷涼で神秘的な朝の中、凛とたたずむ緑の樹木を眺める時。それは、チリワインのエレガンス、その理由を体で知る時。