ヴィック
Vik

芸術の中で翼を休める

(左)醸造施設もモダン。水は旅人に癒しを感じてもらうとともに、施設の温度を一定に保つというワインのためのものでもある。(右)『La Piu Belle 2011』は解放的すぎないセクシーさ。奥ゆかしさとピュアな微笑みがかえって艶っぽい

 西に陽が傾き、斜面が少しずつ茜色に代わっていくカチャポアル・ヴァレー。開けたブドウ畑の中、車を走らせていると小高い丘の上に、長い長いスペーストラベルの間に機体を休める銀色の宇宙船を思わせる建物が見えてくる。

 異様ではない。不思議に自然に溶け込み、遠くからでも癒しの空間であることが伝わってくる。ノルウェー出身の資産家アレクサンダー・ヴィックさんが描いた「世界最高のワインを造る」という夢、いや目標のために選んだこの場所は、彼の理想郷でもある。

目の前に広がるのは灌漑のための人口湖。旅人の目からは癒しのオアシス。部屋ごとに壁のペイントが変わる。部屋自体がミュージアム

 だから必然的に、畑も醸造施設もステイも、さらにはアクティビティも、彼のセンスと物語に溢れている。

 北欧的なシンプルさと都会の洗練が、チリの大地と空と空気と見事に調和し、新しい価値を生みだす空間。アレクサンダーさんの奥様がしつらえたインテリア、日本人を含むワールドワイドな建築家や芸術家が参画してクリエイトされた部屋、施設。野生と自然を存分に感じられる仕掛け。

その先の人口湖へと気持ちが溶け込んでいく。

 ここで味わうワイン、ここで過ごす時間は、僕の数多くの旅の記録の中でも格別のものだった。そして素晴らしい空間は、旅人のためだけではない。ワインにとっても幸せな環境。現代博物館のような醸造施設は、最新鋭の機器、徹底的なクリーンアップ、神秘的なテイスティングルーム…、ワインフリークもまた訪れるべき場所だろう。

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