国家の指導者が「謙虚」でなければならない理由

 第196回通常国会が始まっている。だが、国会は相変わらず野党による首相周辺の疑惑追及が続いている。昨年以来の森友学園・加計学園に加えて、新たにスーパーコンピューター開発会社による詐欺事件が浮上し、立憲民主党の辻元清美氏が「もりそばと、かけそばだけだと思っていたら、スパゲティまで出てきた。もり・かけ・スパだ」と発言するなど、政府をさらに厳しく追及する姿勢を示している。

 結局、昨年以来、国会の争点は「安倍首相の人間性」に集中している。首相は昨年夏の支持率急落、東京都議会議員選での自民党惨敗以降、「謙虚な姿勢で政権運営に当たる」と繰り返し、野党側は首相の姿勢を「驕り」「傲慢」と非難し、「首相は謙虚になるべきだ」と主張し続けている。しかし、そもそもなぜ指導者は「謙虚」でなければならないか、考えてみたことはあるだろうか。

「首相の謙虚さ」が
争点だった昨年の日本政治

「首相の謙虚さ」が争点だった昨年の日本政治を簡単に振り返ってみたい。昨年は、2012年12月に第二次安倍晋三政権が発足して以来続いてきた「安倍一強」が、大きく揺れ動いた年だった。通常国会では、民進党・共産党による野党共闘による「なんでも反対」によって、与野党間の協議のないまま、与党が「テロ等準備罪法案」を参院法務委員会での採決を省略する「中間報告」を行い、いきなり本会議で強行採決した(本連載第160回)。野党は国会で圧倒的多数を占める数の力で押し切った与党の姿勢を、「傲慢」「驕り」と厳しく批判した。

 また、野党は森友学園問題・加計学園問題で、首相の「権力の私的乱用」の疑惑と、官僚の首相への「忖度」を追及し続けた。「南スーダンPKOの日報隠蔽問題」に関して稲田朋美防衛相の国会答弁が迷走したことも野党の標的となった。安倍政権の支持率は急落し、7月の東京都議会議員選挙では、小池百合子東京都知事率いる「都民ファーストの会」の台頭もあり、自民党は惨敗を喫した(第161回)。首相は、にわかに「謙虚な姿勢で政権運営に当たる」と強調するようになった。