文化行事は、政治宣伝色の強いモランボン楽団ではなく、三池淵管弦楽団を主体としていたが、その団長にモランボンの団長である玄松月氏を据え、モランボンの団員も潜り込ませるなど、“モランボン色”の強いものだった。そんな三池淵管弦楽団や美女応援団は、南北統一を前面に掲げ、北朝鮮が平和的な統一を求めているかのような幻想を与えていた。

 ただ、その裏では「北朝鮮はオリンピックには出ない」などと言って脅しをかけ、あらゆることで韓国に譲歩求めていたし、三池淵管弦楽団の公演では入場料収入を得ていた。また、夜中に突然、万景峰92の派遣を伝え、韓国に受け入れを迫っていた。

五輪前日に強行した軍事パレードでも
韓国を取り込むことを忘れず

 こうしたオリンピックに関わる動きとは別に、北朝鮮はオリンピック開会式前日、軍創建記念日の軍事パレードを強行した。

 昨年まで軍創建記念日は、4月25日の朝鮮人民軍の正規軍創設の日だった。それを今年は、金日成が抗日遊撃隊を創設したとする2月8日に急遽変更した。軍創建記念日を変更してまで軍事パレードを行うことは、共にオリンピックを祝おうとする姿勢ではなく、「核ミサイル開発は放棄しない」「米国の軍事圧力には決して屈しない」というアピール以外のなにものでもない。

 ただ、韓国を取り込もうとする意図も垣間見せた。前回のパレードは2時間50分続いたが、今回は半分の1時間半で終了。外国人特派員を締め出し、国内行事とした。また、初めて生中継せず、録画中継とした。パレードには、火星15と見られるICBMも登場したが、金正恩委員長は演説で核ミサイル開発には触れず、米国の脅威のみ強調した。

 こうした姿勢の背景には、米国を悪者とする一方で、韓国は対話の相手だとする雰囲気を醸成しようとする意図が見える。そのため、この程度の規模が適当だと考えたのだろう。テレビ中継をやめたのは、暗殺を恐れて常に隠れて行動している金正恩委員長が、自分に対する攻撃を恐れたからだと見るのが適当だろう。