野良犬として生きてきたから
外資との競争も恐くない

 私のインタビューに応じた、長城汽車の朱恩澤氏の言葉が非常に印象的だった。

「私たちは野良犬だ。誰も餌はくれない。自ら食べ物を探さなければならない。今日なんとか食べ物を確保できても、明日の飯がどこにあるのか分からない。こういう環境の中で成長してきたのだから、外資企業との競争だって恐くはない」

 2005年5月21日号の週刊ダイヤモンドに寄稿した記事は、「内側から見た中国自動車産業 主役はもはや合弁にあらず? 民族系メーカー大躍進の真相」というタイトルだった。

 記事の中で、長城汽車(河北省保定市)の他、奇瑞汽車(チェリー、安徽省蕪湖市)、吉利汽車(ジーリー、浙江省台州市)、哈飛汽車(黒竜江省ハルビン市)、華晨汽車(遼寧省瀋陽市)を民族系主要メーカーとして紹介した。

 そしてその特徴として、次のように強調した。

「本社所在地は、いずれも中国の最重要都市ではない。中には蕪湖や台州のように、田舎のイメージが強い地方都市もある」

 自動車部品製造という名目で会社を設立した奇瑞汽車は、一時、無理やり上海汽車の傘下に入れられ、上海汽車の許可書がなければ車を販売できないなど、創業当時は困難を極めた。ジーリーもまた、製造した車の販売許可書を、一時、政府から発行してもらえなかった苦い過去を持つ。

 しかし、「野良犬」だったこれらの企業は、こうした忌々しい過去が嘘のような躍進ぶりを見せており、中国政府もWTOに加盟したこともあって、ここまで成長してきた民族系メーカーを無視することができず、その存在を認めるようになった。

 私は週刊ダイヤモンドの記事の中で、「ジーリーなどの台頭は、第二のハイアールの登場を予感させずにいられない」と評価した。だから、いまのジーリーの躍進ぶりを見ると、感慨深いものが胸中を去来する。そして自分の目も確かだったと自分を褒めたくなる。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)