あのマキタがBluetoothスピーカーを売っている。型番は「MR200」。例によって電動工具用のリチウムイオンバッテリーを使う、青緑色の強そうなやつだ。建設会社の会社員である私は、うちの現場でどうだろうと、編集部経由でメーカーから広報機材を貸していただいた。この製品をオーディオ専門店で見たことはないが、工具などを扱うモノタロウでなら普通に買える(1万1772円)。そこがまず気に入った。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 ちなみに同社からはコーヒーメーカー(CM500DZ)、ラジオ(MR050、MR051、MR052、MR102、MR103、MR106、MR107、MR108)、ロボット掃除機(RC200DZ)など、家電系機器が数多くラインナップされている。いずれも電動工具メーカーの製品という意外性から、ネット民の間では評判だ。

 もちろんメーカーとしては「あのマキタがまたwwwww」のようなウケを狙っているわけではない。電動工具メーカーとしての現場感覚から「どこで誰が何の目的で使うのか」を企画として明確に打ち出せるため、家電メーカーのマーケティングから生まれた製品とは一線を画す。そこがおもしろい。

 そしてオフロード走行を目的とした四輪駆動車を街で使ってもいいように、マキタの製品を一般の家電として使ってもいいはずだ。実際、この製品には実用に即した作り込みがいくつも見られ、機能的なデザインには惚れ惚れする。おまけに音もいい。現場やガレージだけでなく、インドアアウトドア夏冬問わず使える携帯スピーカーの決定版だとさえ私は思っている。

IP64の完全な防塵性能

 カラーバリエーションは青と黒。バッテリーは別売りだが、ACアダプターが付属するので、本体のみ買ってきてもすぐ使える。対応するバッテリーは10.8V、14.4V、18V。

 本体の長さ211×幅203×高さ199mmという立方体に近いサイズは、ちょっと大きめのランチボックス感覚だ。バッテリーを含まない本体重量は2.7kg。サイズからすればやや重いが、本体上部にソフトグリップの貼られた可動式ハンドルがあり、持ち運びは楽。多少そのへんにぶつけても平気なように、筐体の角はバンプガードで保護されている。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 マキタならではのスペックは「IP64」という「完全な防塵構造」と「あらゆる方向からの水の飛沫によっても有害な影響を受けない」防塵・坊沫性能にある。平たく言えば、粉塵の舞う空間で、多少の水しぶきを浴びるのは想定内ということ。防沫構造のBluetoothスピーカーは数多いが、最上級の防塵性能をうたったものは記憶にない。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 本体側面には、外部機器充電用のUSB端子(5V2.1Ah)、AUX INの3.5mmステレオミニ端子、ACアダプター接続用のDC端子(12V)があり、それぞれ大型のフラップ付きカバーで覆われている。これは手袋をしたまま使うことを想定したものだろう。

 本体前面上部に、やや傾斜をつけて並べられた操作ボタンも同様で、ほどよい大きさと同時に、適切なストロークも持たせてある。その上、動作状態を示す各インジケーターは大型で輝度も高く、ホコリの付いたゴーグル越しでもはっきり確認できるはず。色もBluetoothの接続状態を示す青、音量が上限に達したことを示す赤、AUX IN接続を示す緑とわかりやすい。

 こうしたヘヴィーデューティーな仕様にもかかわらず、スピーカーやアンプ周りは、まるでオーディオメーカーの設計のように凝っているのがおもしろい。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった
マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

磁性流体ユニットとバイアンプ仕様の贅沢設計

 モノラルながらツィーターは36mm、ウーファーは101.6mmの2スピーカー構成で、それぞれを独立したアンプで駆動するバイアンプ仕様。それだけでも贅沢なのにツイーターには磁性流体ユニットが採用されている。ボイスコイルを支えるダンパーをなくし、余計な振動源を取り除けばひずみが抑えられるというので、同様のユニットはソニーの製品によく使われている。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 実際の音だが、これが期待していた以上だった。ある程度重量のある頑丈な筐体であることから、パワーを入れてもビビリ音や箱鳴りのようなものは聞こえてこない。ユニット構成なりのバランスも取れている上に、低域にも不足はない。

 中音域の抜けが良いのも美点で、ある程度スピーカーから離れて聞いても、人の声はよく通る。最大ボリューム近辺まで上げていっても、なかなか歪み始めないから、小型スピーカーの薄っぺらさはない。

 Bluetooth 4.0で、コーデックはSBCのみ対応というスペックはごく普通で、低遅延コーデックを使っているわけではないが、動画再生時の音ズレは感じられない。この点でまったく評価できないオーディオメーカーの製品もある中で、これは素晴らしい。

 ネット上には低音しか出ないという評価も見かけるが、これも使い方次第だ。このスピーカーには、本体の音量を絞ると低域が増強されるラウドネス回路が入っている。もし低音しか聞こえないと感じたら、スマートフォンの音量を下げて、スピーカーの音量を上げればいい。

 逆に低域が欲しいと思ったらスピーカーの音量を下げて、スマートフォンのボリュームを上げればいい。Bluetoothで接続しても、スマートフォンの音量操作とスピーカーの音量は連動しない仕様なので、スピーカーの音量をどこに設定するかで、低域の量は調整できる。

チューニングダクトを兼ねるスマホ格納室

 ユニークなのは低域のチューニング方法だ。本体背面下にスマートフォンを格納するハッチがあり、その中の格納スペースが低域増強用のチューニングダクトになっているのだ。写真に撮ることはできなかったが、この格納スペースの上にはスリットが開いていて、スピーカーユニットの気室とつながっているようだ。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 格納スペースのサイズは、実測で間口9.5cm、高さ2cm、奥行き18cm程度。これくらいあれば最近の大きなスマートフォンでも余裕で収まるはず。USBケーブルでの充電や、AUX INへの優先接続を考え、ハッチを閉めてもケーブルを逃がせるスリットも設けてある。

 スマートフォンの置き場確保とチューニングを兼ねたこの仕掛け、マキタの開発力おそるべしだ。問題なのは、ここにスマートフォンを格納しておくと、ボスが電話をかけてきても気付きにくいこと。このスピーカーには着信通知もハンズフリー通話機能もない。あとで怒られないように、その点には留意しなければならない。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

バッテリー込みで買うと高い

 スピーカー本体の実売価格は1万円を切るか切らないか程度で、機能、性能を考えると間違いなく安い。問題はバッテリーだ。充電器と一式揃えるとなると、かなり高くつく。マキタユーザー向けに、手持ちの工具用バッテリーを流用してもらおうという製品だから、それは仕方がない。

 だがお金のことを考える前にこれを見て欲しい。バッテリーを装着するために、こんな大きなハッチの開閉機構が設けられているのだ。ハッチ開閉用のハンドルを跳ね上げ、バッテリーをガッシャンとスライドさせて装着する。人によって見方はそれぞれだろうが、なんだこのサンダーバード2号感は。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった
マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった
マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 気密性を保つシーリング材に適切に加圧するため、ハンドルの開閉には結構な手応えがあるし、ハッチ自体も無駄と言えるほど丈夫にできている。こんな構造だから大音量で鳴らしても全然ビビらないのだ。もうこれだけで私はやられた。このスピーカーの容積とメカニズムの1/3はバッテリーのために割かれている。もはやバッテリーが主役と言ってもいい。

 バッテリーで出力が違うのもおもしろい。10.8Vは3.5W、14.4Vは6W、18Vは10W。当然ながら持続時間も異なり、Bluetooth接続時の最長時間は、BL1860B(18V 6.0Ah)の約37時間、最短はBL1415N(14.4V 1.5Ah)/BL1815N(18V 1.5Ah)の約9時間。バッテリーでこれだけ長時間使えるのもウリにしていいはずだ。

マキタのスピーカー「MR200」は音も仕様も構造も斜め上だった

 ちなみに今回お借りしたバッテリーは、最大出力が出せる「BL1860B」、充電器は「DC18RC」という組み合わせ。充電器は冷却ファン付きで、6.0Ahの容量を55分で充電してしまう。ただし、この組み合わせは実売2万円を超える。18Vで最小容量の「BL1815N」とDC18RCを合わせても1万円オーバー。

 それでも、このシステムで音楽を聴くのは、凡庸なオーディオ装置にはないワクワク感があって、私はそこが大いに気に入った。だが申し訳ないことに、実はうちの会社はマキタの工具を使っていない。だから買うならバッテリー込み。さあどうしよう。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。趣味はカーリング観戦。ロコ・ソラーレラブ。

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