話術の奥義とは、「聴衆の無言のメッセージ」を聴く技術であるPhoto:REUTERS/AFLO

拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第40回の講義では、「技術」に焦点を当て、拙著、『ダボス会議に見る世界のトップリーダーの話術』(東洋経済新報社)において述べたテーマを取り上げよう。

トニー・ブレアの「話術」の秘密

「First of All!」(まず第一に!)

 その彼の声が響くと、もう、ダボス会議の聴衆は、彼の話に惹き込まれていく。ときに、会場を沸かせる笑いを取り、ときに、的確な指摘に聴衆を頷かせ、ときに、心に沁み入る言葉で感動を呼び起こす。

 トニー・ブレア。イギリス元首相。その根強い国民的人気から10年の長期政権を担った政治家。なぜ、彼のスピーチは、これほどまでに、聴衆の心を掴むのか。

 当意即妙という意味では、天下一品。話の流麗さという意味でも、他の追随を許さない。基調講演であっても、パネル討論であっても、会場の聴衆の心を掴む発言を見事に行う、当代随一の話者。