フェリー「さんふらわあ」号、20年ぶり全面刷新で何が変わった?小野北絵・商船三井フェリー 司厨長 Photo by Yoshihisa Wada

 わずかに重油の臭いが漂う船に揺られ、大広間で雑魚寝する──。首都圏(茨城県の大洗港)と北海道(苫小牧港)を結ぶ商船三井フェリーの「さんふらわあ」号では一昔前まで、こうした光景が繰り広げられていた。

 しかし昨年春、20年ぶりに新造船を導入。人や貨物を運ぶだけでなく「船旅を楽しむ」というコンセプトが加わり、「洋上の動くホテル」として生まれ変わった。

 その船内はクルーズ船にも引けを取らないほどゴージャスだ。吹き抜けのエントランスには色鮮やかなじゅうたんが敷かれ、専用バルコニーが付いたスイートルームをはじめ、大きなベッドを備えた2~4人向けの個室がずらり。眺めのいい大浴場にはサウナも付いている。

 生まれ変わったさんふらわあで司厨長を務めるのが、小野北絵だ。司厨とは聞き慣れない言葉だが、船舶用語で接客と調理を担当するサービス部門のこと。小野は客室やレストラン、売店など船内をくまなく回り、さまざまな客の要望に応対。部下に指示を出していく。

“海なし県”の埼玉出身ながら、子供のときに家族で八丈島旅行をしたのがきっかけで、海や船に強い憧れを抱くようになった小野。船員養成学校を卒業後、司厨部員になって以来、船上で20日勤務し、下りて10日休むという生活を20年間送っている。船内にはスタッフの居住スペースがあり、船長以下、甲板部や機関部など技術系部員と司厨部員、総勢約30人で寝食を共にしながら働く日々だ。

 そんな小野にとって新造船就航はまたとない大仕事。そもそも今回のリニューアルの狙いは、次の20年を見据えてさんふらわあのハードとソフト、両面を改革していくことにあった。