前回は、高度成長期に導入した退職金規程をいまだに運用している企業が、知らない間に退職金支払い負担が増していく実態をシミュレーションで認識することの重要性を指摘しました。今回は、いったいどうすれば退職金制度を現実に即した持続可能なものにできるかについて説明していきます。

退職金制度を持続可能な
ものとするために

 景気は右肩上がり、社員もまだ若かった高度成長期に導入した退職金制度を現在もそのまま適用していませんか? 結論から言えば、退職金制度を持続可能にするためには現状に即した内容に変更するしかありません。考え方として提示したいのが次の2点です。

(1)企業の退職金負担が適正であること。退職金の存在が経営の重荷になってはいけない。現実的な負担にあわせて変更を検討する。

(2)退職金制度の存在が会社の利益に貢献していること。制度があることで社員の利益を上げるモチベーションが高まれば、結果として企業の退職金負担額は小さくなる。

 よく誤解されるのは、企業年金制度などの退職金準備方法を変更することで、あたかも退職金問題が解決したかのように思われることです。たしかに利回りのよい運用方法に変更することで企業負担は減少します。ただし、確定拠出年金制度をはじめ、原則として企業年金制度の利回りは未来永劫確定ではありません。つまりそれは、本質的な解決ではありません。退職金制度の規定そのものを変更しなければ企業は常に退職金支払いリスクを抱えることになります。