5G

 ギガビットの高速通信が可能な5Gサービスが、間もなく日本でも始まろうとしています。それに先駆け平昌冬季五輪が開催中の韓国では、通信キャリアのKTが5Gのテストサービスを会場内外で行なっており、実際に5G対応のタブレットでサービスを体験することもできました。

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平昌五輪でのサムスン電子製5Gタブレットを使ったデモ

 5Gのネットワークは各インフラメーカーが開発しています。その中でもサムスン電子は平昌五輪に5Gタブレットを提供するなど、スマートフォンやタブレットなどのデバイスメーカーとして有名ですが、ネットワーク事業も手掛けています。5Gのインフラは韓国を始めアメリカや日本でもキャリアと組んで現在テストを行なっているところです。その5Gの現在の開発状況や商用化の見通しなどを、サムスン電子のネットワーク事業部常務、 申東洙氏に伺いました。

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サムスンの申東洙常務

 韓国では実際に5Gの動いている様子を体験することができました。しかし、これはまだテスト段階で、他の国も同様です。サムスン電子は現在、28GHz帯を使ってアメリカや日本でテストをしているとのこと。アメリカではベライゾンとFWA(Fixed Wireless Access)と呼ばれる、ラストワンマイル、すなわち有線ブロードバンドの代わりに無線を使うサービス用途としてのテストを進めています。ベライゾンは現在アメリカ11の都市でこのFWAトライアルを実施していますが、そのうち7ヵ所をサムスン電子が担当。なお、ベライゾンの5Gは3GPPが制定する5Gの標準規格以前のものを利用しているため(すなわちベライゾン独自のもの)、他の国やキャリアに先行してトライアルサービスが実施できているのです。

 日本ではドコモやKDDIとテストをしています。一方、韓国ではKTに加え、SKテレコムとも協業中です。日本と韓国ではアメリカのようなFWA用途ではなく、スマートフォンやタブレットなど4Gの上位サービスとして5Gの展開を各キャリアが考えています。そのためアメリカとはテスト内容も異なるようです。

 日本ではサーキットを使い、時速200kmでのハンドオーバーテストも行なわれました。これは新幹線など高速鉄道でも5Gが実際に使えるのか、といったテストに相当します。テストでは時速192kmでのハンドオーバーに成功しています。しかし、障害物がほとんどないサーキットでテストしたにもかかわらず、サーキットを囲むフェンスなどに電波が反射して影響を及ぼすなど、予想していなかった結果も得られました。28GHzという新しい周波数の特性を掴んでいくためには、より多くのテストをしていくことが重要というわけです。

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平昌オリンピック会場は山間部の28GHz帯テストに向いている

 ちなみに28GHzの周波数は直進性に優れていますし、帯域を広げられるため高容量のデータを流せます。その反面、都市部などビルに囲まれたエリアでは影となる部分にどのように電波を届けるかという問題も生じます。3Gや4Gの時代には使える周波数が少なかったために、それぞれの周波数をどう使い分けるかがキャリアの悩みどころでした。一方5Gでは既存の3Gや4Gなど低い周波数帯も合わせて利用するため、28GHzの周波数の特性を掴みつつ、その長所を生かしながら他の周波数との組み合わせも考えていくことができます。

 サムスン電子は28GHz帯が他の新しい周波数よりアドバンテージがあると考え、特に注力して開発を行なっています。しかし、現行の6GHz以下となる、3.5GHzや800MHzなどの周波数での5Gの開発も進めています。このあたりはキャリアの要望に応じて複数の組み合わせを提供できるように準備している段階です。

 ところで、現在平昌五輪で実施中の5Gのテストサービスでは、何か知見は得られているのでしょうか? 現時点ではまだテストを始めたばかりと言うこともあり、引き続き日々のテスト状況を確認するにとどまっているそうです。韓国国内での5Gの商用サービスを早急に進めるためにも今回のテストは重要であり、KTとサムスン電子とで協力しながら問題の解析などをこれから進めていくとのこと。

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KTとの協業で5Gの韓国展開商用化を目指す

 サムスン電子は他のネットワークベンダーとは異なり、インフラだけではなくチップセット、そして端末も自社で持っています。そのため基地局から端末まで、エンドツーエンドなソリューションをキャリアに提供することができます。今回のテストでも5Gの端末を提供できたのは、すべてを自社で開発する力を持っているからできたことでしょう。なお5Gタブレットの内部については現時点では非公開。自社のチップを利用しているとのことですが、モデムやSoCなどどの部分なのかは不明です。

 今後のスケジュールですが、まずは韓国国内の5Gの商用化、アメリカのベライゾンでのFWAの実用化、そして2020年の東京五輪までに日本でも5Gの具体的な動きが起きるでしょう。サムスン電子は端末だけではなく、今後はインフラも含め5Gビジネスの中で中核企業としてプレゼンスを高めることになります。

 もちろんすべてをサムスン電子が提供できるわけではありません。他社も含め、5Gでは弱点を持つ企業と長所を持つ企業が協力し合い、新しいビジネススタイルを提供していくことになるでしょう。VR、遠隔医療、自動運転、デジタルサイネージそしてIoTなど、5Gは異業種の参入も活発になり新しいサービスも始まります。そして5G対応スマートフォンはいつになるのか、サムスンの5G関連の動きに注目したいところです。

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5Gの商用化に向け、サムスン電子の動向は大いに気になる

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