受注間際に相次いで他社に客が流れる
独立したエース社員を疑う社長

 不動産投資会社のA社は、事件当時、設立10周年を迎えて従業員は数十名、売上高も50億円を超えようとしていた勢いのある不動産ベンチャーでした。

 そんなA社のオーナー経営者であるB社長から連絡があったのは4月中旬。不動産会社の営業出身だけあって、いかにも体育会系らしく、気さくでエネルギッシュなB社長が、とても困惑した表情でA社の課題を話してくれました。

B社長 「新年が明けてから、今まで経験したことのない不思議なロスト(失注)が続いているんだ。ほとんどクロージング(受注)間近というとき、急に他社がウチよりもいい条件を提示してきたとかで、お客さんがそっちに流れちゃうんだよ」

トクチョー 「お客様は、物件の購入をやめたわけではないのですか?」

B社長 「少し経ってから不動産登記を確認したら、ウチで商談をしていたお客様の名前が物件の登記名義人になってたんだ。他社に乗り換えたのは間違いない」

 しかもB社長には、競合他社に心当たりがあるといいます。

B社長 「お客さんから直接聞いたり、調べたりしたわけじゃないけど、俺は多分Xだろうと思っているんだ。」

 Xとは、前の年の12月までA社で営業課長を務めていた、売り上げトップのエース社員でした。退職1ヵ月前に、「独立したい」と宣言したかと思いきや、翌日から一切の引き継ぎをせずに有休消化に入ってしまい、半ばケンカ別れのように辞めていったのです。