また、与党関係者の一人は「麻生太郎財務相は黒田氏を推していた。『デフレではない状況を作り出した。ほかに誰がいる』と、政策運営に信頼を置いていた」と解説する。別の政府・与党関係者は「昨年夏ごろには、続投の方向がかなり高まっていた」と明かす。

 だが、今年1月になっても、安倍首相は「黒田続投」の確定ボタンを押していなかったもようだ。

 ある政府関係者は「ギリギリの段階で、総理の本音はわからなかった」と話す。

本田氏の処遇で思惑交錯

写真は、正式な政府の発表直前まで、総裁に起用する案が消えていなかった本田悦朗駐スイス大使。都内で2016年3月撮影(2018年 ロイターS/Toru Hanai)

 一方で、大胆な金融緩和の継続と機動的な財政出動を求めているリフレ派は、本田氏の総裁就任を強く求めていた。

 リフレ派の理論的な支柱である元日銀審議委員の中原伸之氏は「黒田氏は財政緊縮の主張だから、総裁続投に反対した」と言明。

 同じく安倍首相のブレーンである浜田宏一内閣官房参与は、本田氏について「日本経済を外国の人に説明する経済外交官として抜群の人材だと思っている。BIS(国際決済銀行)に同行して彼の力量に感心したことがある」と高く評価していた。

 このようなリフレ派の見解は、複数のルートで安倍首相に伝わったとみられている。

 本田氏は昨年11月、ロイターのインタビューで、物価目標が未達成の黒田氏の続投は適切ではなく、名目GDP(国内総生産)600兆円の達成を政府・日銀の共通の目標にするよう共同文書を改訂するとともに、積極的な財政運営も主張した。

 その直後、安倍首相とも会い、両者の間でどのような話し合いがあったのか、人事に関連する政府関係者の視線が集まった。