単なる商店街の忘年会が
いつの間にか注目行事に

「どうせマナーの悪い外国人が伝統を汚すような行為をしたり、ゴミをちらかしたりするからだろ」という反・観光の方たちから文句の声が聞こえてきそうだが、そう単純な話ではない。

「王子 狐の行列」実行委員会事務局を務める、王子銀座商店街振興組合の横田正基理事は、困惑気味にこう話す。

「マスコミや外国人の方たちは『伝統』『神聖な儀式』と紹介してくれるのですが、実はまったくそういう類の話ではなく、もともとこれは商店街の交流を目的に始めた新しいイベントなんです」

 王子に狐の伝承は残っていたが、実はそこにまつわる伝統行事や儀式などは一切なかった。では、あの行列はなにかというと、有り体に言ってしまうと、商店街の人たちの「忘年会」だったというのだ。

「商店街事務所の近くにあるお稲荷さんに奉納されたお酒を、商店街の有志が大晦日の夜に集まって飲んでいたのですが、そのうち誰かが『せっかくだからお宮参りに行くか』と言い出した。それに思いのほか、ついてくる人が多かった、というのが始まりです」(横田理事)

 確かに、商店街事務所で見せてもらった第1回(1993年)の写真では、狐のメイクや装束を身につけている人はおらず、半てんを着た参列者が数人、提灯を持って歩いているだけだ。その後、「狐」つながりで、「つがわ 狐の嫁入行列」で知られる、新潟県東蒲原郡阿賀町津川地区と交流が生まれ、彼らから「狐メイク」を教えてもらって、徐々に今のような「行列スタイル」ができあがったというのだ。

 誤解はされているものの、いまや遠く海外から観光客が訪れるほどの人気年越しイベントに成長したのだから商店街も潤って万々歳ではないか、と思う方も多いかもしれないが、商店街の方たちにそのように水を向けると、ほぼ例外なく苦笑が返ってくる。

「大晦日の夜中ですから、みんな店を閉めているんですよ。開ければいいじゃないかと思うかもしれませんが、観光客はみな行列が目当てなので、路上にいて店に入りません。しかも、イベントとしての時間はわずかなので、行列が終われば渋谷などの繁華街へ移動してしまう」(王子商店街の店主)