このことは自殺予防にも役に立つだろう。この間、政府は「GKB47(ゴールキーパーベース47)」と、明らかにAKB48をもじったセンスの悪い自殺予防キャンペーンを展開しようとして国会で問題になったが、1997年以降、毎年3万人以上の尊い命が、自殺によって奪われているのは非常に深刻な問題だ。自殺未遂者は、その10倍以上もいると言われるが、これほどの多くの人が自ら命を断とうとする、日本という国は、どこか基盤が歪んでいるとしか言いようがない。

 自殺者は、貧困や病気などが主だが、過労、苛めなどの理由も多い。これらはパワハラ自殺と呼んでもいいだろう。

銀行であった本当の話

 私は銀行の人事部にいたので、強烈なパワハラ(当時はこの言葉はなかった)の実態を知っている。

(a)ある支店長は、実績が上がらない部下を、他の部下の見ているところで机の上に置いた算盤の上に座らせ、さらに手に持った算盤で頭を殴った。遂に、算盤が衝撃で壊れた。支店長は、部下に「玉を拾え」と命じた。部下は、血だらけになりながら、玉を拾った。

(b)ある課長は、部下指導の名目で、いつも同じ部下を「馬鹿野郎」「脳なし」「辞めちまえ」とののしり、上がってきた書類を投げ捨てるなどしていた。支店長は、その様子を見て、よく部下を指導していると誉めた。支店長に評価されていると思い込んだ課長は、ますます暴言をエスカレートさせたため、遂に部下は金庫内で首を吊って自殺した。

(a)は、類型①の身体的な暴力、(b)は、類型②の精神的な攻撃に当たるだろう。また『非情銀行』(新潮文庫)という私のデビュー作には、類型③の人間関係からの切り離しの事例を採りあげ、リストラ部屋に閉じ込められ、自殺に追い込まれるサラリーマンを登場させている。

 これらはバブル期に私が知っている事例だが、今日のように企業業績が低迷を続ける時代には、さらに陰湿な事例が増えていることだろうと推察する。