大改革を断行している宮永俊一・三菱重工業社長は、産業界からは一目置かれる経営者だが、社内の人心掌握には苦戦しているようだ。連載第3回は、孤軍奮闘している宮永社長の苦悩に迫る。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
人心掌握なくして改革はならず、三菱重工・宮永社長の課題と苦悩幹部からは「宮永社長の思い、戦略が社内で共有されていないのではないか」との声も上がっている Photo:Reuters/AFLO

「一言で言えば、強か」。宮永俊一・三菱重工業社長と親しい中西宏明・日立製作所会長は、宮永社長の人柄をこう語る。

 それが最も如実に表れたのが、2014年、産業界で語り継がれる仏重電大手アルストムのエネルギー事業争奪戦である。

 三菱重工は、アルストムを買収しようと一足早く動いていた米ゼネラル・エレクトリック(GE)に対抗。火力発電事業で手を組んでいた日立の後ろ盾を得ながら独シーメンスと共同戦線を張り、アルストムに対抗案を突き付けた。

 仏政府との駆け引きを含むタフな交渉が必要な、まさに世界規模の大再編劇への参戦。軍配はGEに上がったが、日独連合の登場で、GEが当初の買収計画からの大幅な譲歩を余儀なくされたことは間違いない。

 宮永社長は、およそ激高しそうにないソフトな語り口とは裏腹に、強固な意志を内に秘めた、実にアグレッシブな経営者だ。