安倍首相と菅官房長官は、強化された影響力を巧みに行使した。例えば、内閣人事局が設置される以前にも、安倍首相は、自衛隊を巡る平和憲法による制限の緩和を目指すという、自身の考えに同調的な元外交官を、憲法解釈を担当する内閣のポストに起用していた。

 安倍首相はまた、側近による強固なインナーサークルを作り上げている。これらの中には、2006─2007年の第1次安倍政権の失敗から学んだ者も多い。第1次安倍政権は、閣僚不祥事や、与党の過半数割れを起こした参院選、自らの健康問題などが原因で、安倍氏が唐突に首相の座を去る結果に終わった。

「信頼する友人で形成されたインサイダーグループが、極めて安定的に政権運営を担っている」と、エクィティファンドのウィズダムツリー・ジャパンのジェスパー・コール最高経営責任者(CEO)は指摘する。「極めて非日本的な形で、彼(安倍氏)は、権力を行使し、制度の枠組みを利用することを恐れていない」

あめとムチ

 野党が分裂し、民主党政権時代の混乱ぶりが有権者の記憶にあったことも、安倍首相に有利に働いた。民主党はその後、3党に分裂。野党票の分散や、投票率の低迷もあり、安倍首相は3度の衆院選で連立与党を圧勝に導いた。

 日銀の超金融緩和策と財政支出を柱とする成長戦略「アベノミクス」により、日本が1980年代以降で最も長期にわたる経済成長を達成したことも、有権者の意識にある。ただ、消費は減速しかねず、賃金上昇も弱いままだ。

 この4年で2度解散総選挙に踏み切った安倍首相の決断も、政権トップの座に挑戦するよりも、再選を果たすことに自民党議員の関心を向けさせ、党内の歩調を保つ効果があった。その一方で安倍首相は、公共事業で選挙区の支持者に報いている。

 安倍首相は、巧みに「あめとムチ」を使いこなしていると、東大の内山融教授は指摘する。