発売が決まった「AK70 MKII Yui Ogura Edition」。人気のハイレゾプレーヤーを開発するAstell&Kernと、声優・小倉唯さんのコラボレーションで実現した限定製品だ。小倉唯さん自身が監修したデザイン、実姉のイラストレーターsakittyartさんによるイラストなど、小倉家の総力(?)を結集した製品でもある。

AK70 MKII Yui Ogura Edition

 また同製品には特別にハイレゾ収録した小倉唯さんによるサンクスメッセージに加え、取り卸しの新曲「Brand-New-Road」が192kHz/24bitのハイレゾ品質でプレインストールされることも決定した。特典となるサンクスメッセージを収録した直後の小倉唯さんと、Brand-New-Roadの作曲とアレンジを担当した多保孝一さんに、東京・乃木坂のソニー・ミュージックスタジオでお話を聞いた。

※製品の特典内容および多保さんのプロフィールなどはこちらの記事も参照。

母性のように聴く人を包み込むようなものを目指そう

 音楽プレーヤーをわたし仕様にデザインできるのは、歌い手の立場として光栄だし、ありがたいことだなと。CDデビューすら夢にも思っていなかったのに、プレーヤーにまでなるなんて。いい音楽をいい音質で楽しんでほしいという思いは作り手としてあります。いままでわたしの曲を聞いてくれていたファンも、わたし自身の声だったり音楽の魅力だったり、新しい曲の魅力に気付いてくれるのではないかな。

AK70 MKII Yui Ogura Edition

 そんな風に語る小倉唯さん。コラボレーションが決定して、嬉しさと不安が入り混じった気持ちになったという。

── コラボレーションの話を聞いて最初に思ったことは?

小倉唯 コラボレーションの経験はこれまでほとんどなかったので、嬉しさはもちろんありつつも、不安のほうが大きかったです。一緒に作っていくうえで、じぶんに至らないことが多かったら申し訳ないな、本当にいいのかな。とりあえず失礼がないように頑張りたいなと思いましたね。

── デザインの監修もされましたが。

小倉 デザインを自由に決められると聞いて、ぱっと思いついたのが、実の姉に協力してもらうおうということです。わたしのほうからスタッフさんにご相談して、実現しました。多くの人の力を借りながら、特別な想いを形にできる機会ですし、今までとは違った作品や表現にできたらいいなという想いで……。お姉ちゃんとコラボレーションできたらより愛着がわくかなと思って提案させていただきました。

── 楽曲を依頼された多保さんの小倉さんに対する印象は?

多保孝一 オファーをいただいてすぐに、ライブ映像を見ました。すごく大きな会場でファンの熱気に包まれて歌っている小倉さんの姿を見て、すぐに曲のイメージが浮かびましたね。メロディーなど具体的なものではないのですが、スケールの大きな曲にしよう。母性のように聴く人を包み込むようなものを目指そうと思いました。

── 楽曲を最初に聴いた際の印象は?

小倉 いつもより壮大で、見せる世界観も広い曲です。初めて聞いたときは、新鮮で正直、感動しました。あまりにも素晴らしいので、わたしが声を入れるのも恐れ多いなと。「仮歌で完成でもいいのでは(笑)」とも思ったのですが、せっかくの機会だから、純粋に楽曲を楽しみながら歌わせていただきました。

 普段いろいろな曲を聴いていますが、わたしが“聴く曲と“歌う曲”は必ずしも一致しない部分があり、今回いただいた曲は、どちらかというと “聴く曲”のほうに近く、チャレンジできるのが嬉しかったですね。

── 多保さんの小倉さんに対する印象は?

多保 僕の作る曲はメロディーのリズムにちょっと癖があるみたいで、苦戦する歌い手さんが割と多くいらっしゃいます。でも小倉さんは最初から自分のものにしていて、歌入れが順調に進んだのが印象的でした。初対面では難しいことも多いのですが、僕のディレクションを信頼してくれる感じが伝わってきて、僕もその信頼にしっかりと応えたいと思いました。結果的にいい録音ができたと思うし、イメージにぴったりのできあがりになったのが嬉しかったですね。とても楽しいレコーディングでした!

AK70 MKII Yui Ogura Edition

小倉 楽しかったです! 多保さんとは、レコーディングの現場で初めてお会いしたので、失礼がないようにドキドキしていました。でも歌を録るときには、できるだけリラックスして臨もうと心に決めていました。

 多保さんは、普段わたしが聴いていた楽曲も手掛けられていて、雲の上の方というイメージがあったんです。でも、実際にお会いしたら、フレンドリーに挨拶していただいて。わたしも心を開いていいんだという気持ちになれました。多保さんの優しさに後押しされて、リラックスして収録できましたし、ディレクション自体もすっごく分かりやすくて! 波長が合うというか、「きっとこういうことなんだろうな」と感覚的に頭の中に入ってきて。ストレスなく、歌えば歌うほど曲がつかめて、たくさんの発見ができるレコーディングでした。貴重で、すてきな時間を体験をさせていただきました!

多保 収録はブースとスタジオに分かれ、モニターを介して話すので、初対面だとコミュニケーションが難しかったりするのですが、小倉さんが心を開いてくれたので、とてもスムーズに進みました。コーラスのハモリのパートが多かったのですが、ここもすごく順調で。本当におつかれさまでした。複雑なコーラスラインを歌っていただいて。

── 難易度的にかなり高かったですよね。

小倉 わたし、もともとハモリが好きで。だから、現場でディレクターさんに急に振られたりもするんですが、今回は曲も曲だったので不安もありつつ……。でも、ハモリ好きなので楽しかったです。

── 仕上がりはいかがですか?

小倉 最初に聴いたとき、じぶんだけどじぶんじゃない人の歌を聴いているような不思議な感覚に陥りました。新しいじぶんを発見できたというか。(この楽曲の制作では)レコーディングしたきりで、テイクを聴きなおす機会がなかったので、わたし自身も楽しみにしていましたし、実際に聴いてこういう世界観になるんだと分かり、レコーディングの記憶がよみがえりました。愛が増えるというか……多保さんは母性と言っていましたが、神秘的で神聖な空気もありつつ、胸を打たれる強さとか世界観の広さなど、深みがあって、聴けば聴くほど発見があって……。癖になるリズムなど、いろんなギミックがはいっているんだろうなと思います。歌っているわたし自身が胸をうたれました。

AK70 小倉唯モデル

多保 イメージしていたとおりというより、小倉さんの歌力(うたぢから)とか人間力を含めて、それを凌駕する仕上がりになりましたね。狙い通りの楽曲になったし、ご本人にそうおっしゃっていただけること自体がとても嬉しいですね。

── ハイレゾ収録となりましたが。

多保 そうですね。生楽器がハイレゾで栄えるアレンジにしています。坂部(剛)さんと共同でアレンジして、特にストリングスの部分を担当していただいたんですが、弦のラインはハイレゾを意識して考えてくれたんだろうと思います。トータルで見ても、ハイレゾプレーヤーに合った仕上がりになったと思います。

── AK70 MKIIを聴いてどう思いましたか?

小倉 先ほどじぶんの楽曲を聴いたんですが、すごく驚きました。こんなに「すごいんだ」と、ある意味素人視点で感じました。一方、録る側の小倉唯としては、ちゃんとしたスタジオでレコーディングさせていただいていますが、その環境とか生の演奏に近いぐらい精度の高さを感じたので、プレーヤーによってこんなにも変わるんだというのが正直な感想です。

AK70 小倉唯モデル

多保 自分たちが現場で作っていたBrand-New-Roadが一番わかりやすいと思い、完成後にこのプレーヤーで聴くのをすごく楽しみにしていました。解像度の高さとレンジの広さですね。上も下もすごく伸びやか。解像度が高いので音の細部まで聴こえるけど、聴こえ過ぎることによって疲れたりということは全くなく、むしろ心地良いです。ストリングスやピアノ、そして小倉さんの声の高い周波数の帯域がきらっとひかるアレンジですが、そこがハイレゾで映えるようにうまく表現できていました。インストも含めて何回も聴いてしまいましたが、手放せない製品になりそうですね。

怖くて一歩踏み出せない部分を開拓してもらった気がします

 取材ではプレインストール楽曲の話題を中心に、より詳しい内容に話が進んだ。

── 楽曲の聴きどころをより詳しく教えてください。

多保 一番は小倉さんの声ですね。素晴らしい歌です。コーラスも幾重にも重なっているので、注目してもらいたいです。バックの演奏は、シンセサイザーのプラック音から始まり、サビ前まで引っ張っていきます。これがサビに入った瞬間に生のピアノとストリングスに切り替わります。希望の光が差し込んで、霧や雲が晴れるようなイメージなので、そこを聴いてほしいですね。

AK70 MKII Yui Ogura Edition

小倉 ふだん声優としてやっているので、世界観やそれに合った声質を無意識的に考えてしまうみたいです。キャラソンであればキャラクターがいますが、じぶんの曲でも主人公の女の子がいて、どのぐらいの年齢なのか……といった背景を自然と考えてしまいます。今回は、いつもとちがうわたしの声色を、歌いながら探っていた部分がありました。等身大のわたしに近いというのが、考えて出た結論です。希望やこういう感じに道が拓けていくという過程を、歌う際に無意識なうちにも意識していたんだなと思います。そんな世界観が伝わったらいいなと思います。イメージを広げながら、声に注目して聴いてもらえるといいですね。

── アップテンポで元気が出る曲ですが、どういうときに聴いてほしい?

多保 朝夕問わず、心がしんどいときに背中を押してくれる曲になるんじゃないかな。そんな願いを込めています。

小倉 この曲がすごくおもしろいと思うのは、世代を問わず楽しんでもらえる楽曲ですし、じぶんのテンションにいい意味で影響しない=聴くときの気持ちに合わせて聞こえ方が変わってくる曲に思える点です。聴いてくれる方々の気持ちに寄り添えるような楽曲になっていると思います。

── ハモリが好きとのことですが、歌うときに力を入れた点や苦労した点があれば。

小倉 サビにダブルと言われる“声を重ねる技法”がありますが、三重に重ねるのはすごく新しいなと思いながら録っていました。レコーディングではサビを重点的に収録しました。AメロからBメロへの流れも好きで、物語性もあって、じぶんの情緒も影響していて、おもしろいなって思いました。先にAメロを録り、サビに行って、一巡した後、うまくいったので、1番のAメロ、Bメロを改めて録音し直しました。歌っている中で見えてくるものがあり、振り出しに戻って固める作業もできたので、Aメロ、Bメロに関しても思い入れがありますね。

── 意思疎通がスムーズにできたといいますが、どんなアドバイスを?

多保 僕の作るメロディーの特徴というか。裏拍からシンコペーションしていくリズムが独特なので、そのリズムの突っ込み方が細かくて苦戦する方が多いんです。そこでリズムを取るコツや抑揚をつけるコツなどをアドバイスした程度ですね。ちょっとした助言だけです。

小倉 裏拍が多いというか。わたし、もともとリズム感がないので、逆にそれがよかったかもしれないですね。細かいリズムにとらわれず、気持ちの持ちようで歌うというか。多保さんは、その的確なヒントをくれるイメージですね。それを拾っていくうちに見えてくる。思わず「わかりやす~」と突っ込みを入れたっくなるほどでした。

── 作り手として普段から気を付けていることは?

多保 一番は歌い手さんの声が活きること、そしてその人をより輝かせられる曲作りです。それをメロディーで表現できるように気を付けています。高い声と低い声。どちらも好きなのですが、豊かな倍音を持っている人の声が好きですね。

小倉 歌い手の側として、ふだんから意識しているのは、キャラソンでしたら、どれだけそのキャラクター性を出せるか。じぶん名義の楽曲なら、どこまでじぶんのものにできるか。じぶんならではの表現だったり、世界を見せられるかが挑戦です。正解のない世界なので、そこが難しくて。過去にさかのぼって、あのときのわたしはイケてたなとか、今じゃできない表現してるなと思うこともあります。季節や経験値でも表現に差が出るので、じぶんの中でのふり幅をどう出し切るかを意識しています。

普段聴くときはリズミックなものが多いです。じぶんで歌うときは、どうしても思いが入ってしまうんですが、逆に正確に歌える人がすごく好きですね。じぶんがハスキーな声なので、ストレートな声質の人にひかれたりとかもします。

── Brand-New-Roadを通じて、どんな自分がみえてきた?

小倉 むずかしい(笑)。歌の世界観が壮大で、全人類を包み込むような“心の寛さ”を感じたんですが、いままでにない、余裕から生まれる自信だったりとか、思いやりなどを感じたりとか。じぶんだけど、そのじぶんにもこんな一面があるなとか、もっとここ伸ばせるな、など。可能性に気付く部分もありました。怖くて一歩踏み出せない部分を開拓してもらった気がします。こういう路線でがんばったら、見える世界があるのではないか、そんな道筋というか可能性を示してもらった感じがしますね。音楽活動を進めていくうえでの自信につながると思います。

── ハイレゾだからできたこだわりは?

多保 やはり生楽器がいちばん栄えると思いますね。デモの段階では、打ち込み中心でしたが、アプローチを変えて、サビでストリングスとピアノが、ドンと目の前に広がる感じにしました。結果として、楽曲的にも拓けるし、ハイレゾ的にも生音ならではのギラっとしたおいしい倍音が収録できていると思います。

 少し専門的な話をすると、サビでピアノがリズミカルに音符を刻んでいるのですが、こういう場合、リズムのアタックを聞こえやすくするために、ペダルを踏まなかったりします。しかしハイレゾ録音だとピアノの豊かな倍音を収録できるので、ペダルを踏んでもそのニュアンスがちゃんと聴こえていました。だからパーカッシブなパートでもペダルを踏むアプローチを選択できた、とかですかね。

差し色として、男性・女性どちらが持ってもおしゃれかな

── デザインについてのこだわりは?

小倉 色はわたし自身のパーソナルイメージに寄せたピンクです。ただしピンクでも、男女問わず、持ってもらいたいので、濃い目にしたのがこだわりです。淡い色も候補にあったのですが、より女性感が出てしまうな、と。差し色として、男性・女性どちらが持ってもおしゃれかなと思います。差し色大事だと思うので(笑)。

── 監修時のエピソードがあれば。

小倉 やはり印象に残っているのは姉と一緒に共同作業できたことですね。年末年始に実家に帰った際、デザインを詰めていく作業をしたのですが、話し合っているうちに、ほかの家族も一緒になって意見を出し合うことになりました。そういう意味では、姉妹のコラボレーションであり、小倉家の作品とも言えると思います。細かいやりとりを通じて、姉妹の絆も深まりました。

AK70 小倉唯モデル

 Yui Oguraというロゴの文字については、最初「O」が、女性らしいハートのようなラブリーなデザインだったのですが、ターゲットに男性も入るということで、宇宙をイメージするものになりました。「ここをもうちょっと」と意見を出して直してもらったりとかしましたね。

── 過去の曲をAK70 MKIIで聴いてびっくりしたそうですが。

小倉 セカンドアルバムの楽曲を聞きました。ライブではイヤモニを通して聴きますが、それに近い感覚で。市販の機器でもここまで聴けるというのにビックリして。イヤモニは、すごく高価なものだし、密着度も高いですが、それと同じと言っても過言がないぐらいの音質でした。(ライブで小倉さんが聴いている音の感覚を共有できるという質問に)そうかもしれないですね。

── 最後に読者や「AK70 MKII Yui Ogura Edition」を手にするユーザーさんにひとこと。

小倉 わたし自身のコラボレーションで出させていただいた製品ですし、多保さんをはじめ、いろんな方の協力で実現した作品でもあります。楽曲にはわたし自身の新しい側面や楽曲性をこめ、みなさんの人生観がひろがるような深みのあるものになっていると思います。わたしのファンの皆さんももちろんですが、人生の財産として、音楽が好きな方にも魅力を感じていただきつつ聴いてもらえればと思っています!

AK70 小倉唯モデル

── ありがとうございました。