目指すべきは「認知症になる前と変わらない日常生活の継続」だが

 そこで、大きな役割を果たしているのが、食生活などを支え、気にかけてくれる人の存在であり、その人たちとの会話であり、社会的な交流であろう。高齢者ケアの3原則の一つである「認知症になる前と変わらない日常生活の継続」だ。

 認知症を抱えていても、なんとか自宅で1人暮らしをしている高齢者はいる。都会部を中心にますますこうした単身世帯は増えていく。現実にその生活を支えているのは訪問介護のヘルパーの頻回訪問というケースが多い。その日の天気の話題から始まって、他愛もない会話の積み重ねが重要である。日常生活は何の変哲もない言葉や仕草の連続だからである。

 そこで注目したいのが、今回の改定で大きな問題となった訪問介護の「頻回」利用だ。介護保険を審議する社会保障審議会介護給付費分科会の席上で、財務省からの「月90回以上というあまりにも多い訪問介護の利用者がいる。制度上疑問がある」とする見解が披露され、同調する委員が相次いだ。「過剰なサービス」「無駄使い」とする批判の声も出た。

 最終的に厚労省は「統計的に通常よりかけ離れた回数の訪問介護(生活援助中心型)は、市町村の地域ケア会議で検証すること」とした。

 この介護給付費分科会での審議の中で「認知症の人と家族の会」の理事、田部井康夫さんの発言が最も的を射ていた。

「議論を聞いていまして、いささか悲しい思いになってきました。認知症の人の在宅暮らしをどれくらい理解していただいた上で議論が進められているのかなと考えざるを得ません。100回以上といっても、1日3回です。朝昼晩と行けば3回になります」とその場で反論した。

 その後3月19日、厚労省は「通常よりかけ離れた1ヵ月の回数」を明らかにした。この回数を上回るケアプランを作成したケアマネジャーは、事前に保険者の市区町村へ届け出ることも義務とした。市区町村は地域ケア会議を開いてそれらのケアプランを検証することになる。周知期間を経て10月から実施する。