現代の労働市場は、これまで以上に学歴が重視されている。大卒はもちろん、修士号や博士号を求められることも珍しくない。その一方で、大学の学位を持たずにCEO職に就いている人の数も、意外なほど多い。筆者らによる「CEOゲノム・プロジェクト」を通して、そうした人材は3つの点でみずからの優秀さを示していることが判明した。


 雇用主が高い学位を要求する傾向は、ますます強くなっている。かつては高校を卒業していれば就けた仕事の3分の1近くが、いまでは4年制大学の学位を要求する。また以前は、学士号があれば問題なかった仕事の4分の1で、現在は修士号が必要になっている。一方で、米国人の75%が「高等教育は費用がかかりすぎて手が届かない」と考えている。

 雇用する側が学歴を過大評価しがちなのは、安全だからという理由からである。ただし、雇ってみたら間違いだったとわかるケースは数多い。一方で、大活躍するポテンシャルを持つ人材の多くが、見過ごされている。

 筆者らは20年以上にわたり、次のCEOや経営幹部を育成し、選ぶ際の間違いを避けられるよう、企業役員やCEOたちを支援してきた。そうした仕事を通じて、1万7000人を超す経営幹部の評価データを蓄積してきた。また、「CEOゲノム・プロジェクト」では、2600人の経営者を徹底的に研究し、どのような人材が、いかにしてトップになったかを分析した。

 こうした経験を通して、名門大学の卒業証書を持っていても、必ずしもよい経営者になるわけではないことはわかっていた。それでも、研究対象となったCEOのうち、大学を卒業していない人が8%にも上ることが判明したときは、さすがに驚いた。

 どんな時代でも、トップに上り詰めるのは難しい。雇用主をうならせるような学歴がない場合は、なおさらだ。

 では、筆者らのCEOサンプルの8%に当たる人々は、大学卒業の学位を持たずに、いかにしてトップになったのだろうか。ハンディを乗り越えてCEOの座を勝ち取った人たちは、次の3つの点で優秀さを示すことにより、雇い主の信頼を得ていた。