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「たまたま」を生む仕組みをつくりたい【孫泰蔵】2018年1月、Mistletoeはシンガポールのビジネスクラブ、SPECTRUMと提携した  Photo by Takeshi Kojima

 今から約20年前、2000年前後のことだったと思います。兄(孫正義・ソフトバンクグループ社長)のオフィスに、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんがいらっしゃいました。

 2人が兄のゲストハウスへ夕食に行く際、たまたま僕もオフィスにいて、エレベーターの前で2人に偶然、出会ったのです。

 兄は「おー、泰蔵」と僕に気付くと、ビル・ゲイツさんに向かって「ヘイ、ビル。こいつがうちの弟だ」と紹介してくれました。

 さらに「これから夕食に行くけど、一緒に行くか」と聞かれたので、僕は「行く!」と即答しました。夕食会で聞いた話は驚くべきものでした。クラウドやインターネット、新しい「Windows」などとても刺激的な内容で、若い起業家の僕は非常にインスパイアされたことを覚えています。

 以前お話ししたように、米ヤフー創業者のジェリー・ヤンさんとの出会いも偶然でした。振り返ってみて、このような「たまたま」の出来事が自分のモチベーションを著しく変え、人生が大きく変わっていったのです。

 「セレンディピティ」という言葉があります。思いも寄らない偶然から面白く役に立つような価値のある発見をすること。僕はそんなセレンディピティを意図的に起こすためにはどうしたらいいのかと、マネジメントにおいて常に意識しています。

 以前お伝えしたように「事業計画は要らない」と主張するのも、セレンディピティの可能性を自ら捨ててしまうことになるからです。