今期2兆4000億円の史上最高益をたたき出す見通しのトヨタ自動車。だが豊田章男社長が言う「海図なき戦い」は始まったばかりであり、トヨタが乗り越えるべき課題は山積する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

「通期の評価はまだバツだ」。今年2月に開かれたトヨタ自動車の2017年度第3四半期決算説明会。最高財務責任者(CFO)の小林耕士副社長は決算の評価を問われ、ためらいなくそう断じた。

 トヨタはこの説明会で、通期の連結営業利益の見通しを2兆2000億円に上方修正する決算を発表した。当期純利益は2兆4000億円に達し、15年度(2兆3126億円)以来2年ぶりの最高益をたたき出す見通しだ(図(1))。

 それにもかかわらず、小林副社長が“マル”を出さない理由は、米国の法人税減税と円安という一過性の追い風を受けた故の好業績だからだ。

 実際、連結営業利益の増減要因は、為替などの影響を除けば550億円のマイナスとなる見通し。「為替やスワップに左右されない収益構造の会社をつくる」(小林副社長)観点からすれば及第点に達しない、というわけだ。

 収益力強化の鍵を握るのが、トヨタの“お家芸”といえる原価改善努力といえよう。