しかも労賃の上昇、土地使用料の増加などによって、労働集約的な工業は、徐々に沿海部から内陸部に移転していく。先行発展した都市では、安い労働力は不足する一方、IT、バイオ、サービスなどの新規産業の創出が少ないため、失業問題は一段と目立ち始めるだろう。

 都市の活力が低くなり、13年ごろから住宅価格が大きく下がると牛氏は話す。本当にそうだったら、上がる一方の中国の土地価格は、やっと落ち着くようになる。中国語には「表玄関で虎を追い払ったが、裏門から狼が入ってきた」ということわざがあるが、今度は雇用という問題が、徐々に緊迫してくる。

環境負荷は低減するが
まだ遠い豊かな民

 経済成長率が低くなると、中国の環境に対する負荷が間違いなく低減する。

 今日の中国では、大都市では北京、上海だけでなく、ちょっとした沿海部の都市でも交通渋滞で、空気、水がひどく汚染されている。

 今の中国は高度成長のために、資源・エネルギーを大量に消費している。しかも、エネルギー効率は極めて低い。IAEAの統計によれば、同じGDPを創りだすのに、中国では日本より8倍も多くエネルギーを使用している。

 今回の全人代では、例年より多くの人民代表(代議士)が、都市農村を問わず、ひどくなった環境問題の解決に政府の努力を促した。王梅珍代議士は、長江デルタ地域では都市の垣根を乗り越えて、各地域が連帯して大気汚染を防止することを強く求めた。また傅企平代議士は、農村土地の汚染防止に関する法律を制定することを主張した。

 経済成長率を下げないと、環境問題の解決には、本格的に着手できない。「これからセメントの生産能力を大きく削減していく」と、温首相は政府活動報告で話した。小さいセメント工場、製鉄所、化学工場は、普及しつつある自動車とともに、現在、中国最大の汚染源となっている。