確率5割でリスク資産が紙くずになったとしても、株主が損するのは10万円だけだ。「株主有限責任の原則」により、会社が借金を返せなくても株主が代わりに返す必要はないからだ。そうなると、確率5割で大儲け、確率5割で10万円の損ということになり、株主の期待値は非常に高い。

 経営者が株主重視の経営を心がけると、1日目に表1のような会社であったものを、2日目には表2のような会社に変えようとするだろう。銀行から40万円借りて、それを配当して、バランスシートの右側を表2の形にした上で、左側の高格付け社債を売却してリスク資産を購入することになるだろう。もちろんこれは極端な例で、銀行が容認するとは思えないが、話の本質はご理解いただけたと思う。

 こうした事態は、日本経済にとっては由々しきことだ。企業が、期待値ゼロの賭け(確率5割で資産が倍になり、5割でゼロになる)をすることで、企業が5割の確率で倒産することになる。

 銀行と株主の間では、どちらが損失を被るのかというゼロサムゲームだが、確率5割で従業員は失業し、まだ使える事務機器等が二束三文で叩き売られることになりかねない。普通の会社であれば、バランスシートには計上されていないノウハウや顧客の信頼といった「財産」を持っているが、それも消えてしまうのだ。