老後の資産運用

 ここ数年にわたって、売れている投資信託(以下、投信)と言えば分配金の高いものが必ずランキングしていましたが、2017年くらいからそのトレンドが変わりつつあるようです。毎月分配型の投信は、2011年のピーク時には投信全体の残高の5割以上を占めていましたが、現在では3割程度までその比率を下げており、ブームは下火になっていると言えます。この背景には、ここ数年の金融レポートなどで金融庁が毎月分配型投信の販売方法について懸念を示していることが挙げられるでしょう。金融庁の懸念は二つにまとめられると思います。

 一つ目は、分配可能な利益がないのに分配金を支払うため(いわゆるタコ配)、実質的には投資元本を引き出している投信が多い点です。自分の投資元本が返ってきているだけなのに、大きな収益が得られていると勘違いさせてしまう可能性があるということでしょう。

 もう一つは、分配金を受け取るニーズがない人にも売れ筋だからといって毎月分配型を販売している点です。分配金の受取時には税金がかかってしまいます。分配金ニーズのない投資家は、毎月受け取った分配金を再投資することが多いのですが、課税後の分配金を再投資にまわすため、分配頻度の低い投信に比べて資産を増やす力(複利効果)が小さくなってしまいます。長期の資産形成が求められる今の時代に、金融庁はこれらの点を問題視したのだと思われます。 金融庁の懸念に配慮したのか、金融機関がその販売の力点を他のタイプの投信にシフトさせたことで、徐々に毎月分配型の存在感は薄れてきているようです。しかしながら、「人生100年時代」という文脈では、毎月分配型やタコ配も一定の存在意義が出てくると考えます。今回は、昨今問題視されている毎月分配型投信の意外な使い方について触れたいと思います。