いよいよ最終回となる再生奮闘記は、JAL改革のハイライトともいえる「意識改革」に焦点を当てる。何度も繰り返してきたが、JAL再生の両輪となっているのが、稲盛和夫名誉会長がJALにもたらした「意識改革」と「部門別採算制度」である。ある意味で、後者は道具と言ってよい。どんなにすぐれた道具が与えられても、それを使う人々の意識が変わらなければ、道具だけではよき仕事をなしえない。

稲盛のリーダー教育が
フィロソフィ作りの発端

――今回、登場願うのは、その名もずばり意識改革・人づくり推進部部長の野村直史。1984年の入社で、現職の前は、人事部で教育を担当していた。最初に意識改革のバイブルである「JALフィロソフィ」誕生までを振り返ろう。JALは2010年1月に会社更生法の適用を申請したが、稲盛和夫はその直後の2月に会長に就任した。そして6月からリーダー層の意識を変えるために、リーダー教育が実施された。

【その7】意識改革・人づくり推進部部長<br /> 野村直史の場合<br />「意識改革への取り組みは、半永久的に続けて行く」意識改革・人づくり推進部部長・野村直史(のむら なおし)「意識改革への取り組みは、会社が存続する限り、継続的に愚直にやって行く」
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野村 実際に受講したのは、社長の大西(当時、現会長)以下、在京の役員全員、それに部長級の経営幹部、人数にすると50名程度で、延べ17日間にわたって行いました。

 稲盛会長(当時、現名誉会長)から、まさに会社を引っ張っていくリーダーはどうあるべきか、リーダーはどういう考え方で会社を経営していかなくてはいけないのかについて、自ら講話をしていただきました。

 加えて経営手法として部門別採算制度=いわゆるアメーバ経営について、稲盛会長の過去の講演DVDを少し編集して、それを全員で見たり、京セラさんなど社外から数名のゲストをお呼びして講演を聞く。その後、メンバーをいくつかのグループに分けて、じっくりディスカッションし、より理解を深めるということを、繰り返し行いました。