手続きの遅れと医療水準の未達<br />迷走が続く新練馬光が丘病院日大練馬光が丘病院。都は、水面下で日大に「撤退の延期」と「協会との共同診療」を要望したが、方針の撤回には至らなかった

 累積赤字90億円を理由に撤退を決めた日本大学医学部付属練馬光が丘病院(342床)の後継問題が迷走している。4月1日からは、地域医療振興協会(以下、協会)が後継機関として運営を開始する予定だが、いまだ遅々として進んでいないのだ。

 協会は、病院の開設許可証を得るための第1歩となる事前相談計画書を、3月13日になってようやく東京都に提出。予定は11月だったのだが、医師の引き継ぎ作業などの停滞によって大幅に遅れた。

 通常なら提出を受けた後に都が審査、その結果通知書が出てから開設許可証が降りるまでに少なくても3週間はかかる。とうにタイムリミットは越えた格好だ。

 しかも計画書を出す際には、本来、病院の土地・建物を無償で提供する練馬区と同協会の契約書か、協定書が必須。ところが、その大前提となる同区と日大側の契約の解消すら、いまだに決着の目途はたっていない。

 3月14日に開かれた練馬区議会の医療・高齢者等特別委員会。「何を根拠に、どう契約を解除するのか」(池尻成二区議)との追及に、区の地域医療課は「日大とは、今後、協議していく」と語るに止まった。

 なにより、日大が区に預けている50億円の保証金の返還問題もいまだ話し合いがつかず、平行線のままだ。 

 こうした状況に対し、東京都は医療の空白期間を是が非でも避けたいとして、今後の対応に必死の様相だ。

「計画書の確実性を見た上で、急いで内部決済を取る。契約書については、期日の関係でそれに代わる書面でもかまわない。これまで地域の医療を支えてきたこの病院がなくなっては困る」(東京都医療安全課)

 同病院の外来患者は、年間に約22万人。小児救急では、約9000人を受け入れ、近隣の区市にとっても要となる医療機関だった。