「最大の問題の1つは、仮想通貨についてはあまりにも多くのことが語られており、どのような展開になるかがひどく不確実だという点だ」とHSBCアマナー(マレーシア)のジヤード・マホメド氏は語る。彼は同社でイスラム関係の取引を監督するシャリーア委員会を率いている。

 各国のシャリーア関連当局は、仮想通貨が許容されるかどうかの裁定をまだ下していない。イスラム金融に関する基準を勧告するグローバル規模の団体もいくつかあるが、いずれもその基準を強制する権限を持たない。多くの政府は、潜在的な不安定さを憂慮しつつも、新たなテクノロジーの恩恵を被るチャンスを逃したくないという、どっちつかずの態度を取っているように見受けられる。

 サウジアラビアとUAEの中央銀行は、国民に対しビットコイン取引のリスクについて警告を発しているが、明確に禁じてはいない。

 そのためイスラム諸国の投資家は、コンサルタント会社や金融会社、学術機関に所属するイスラム法学者による、場合によっては矛盾する判断のあいだで選択に悩むことになる。

 初期段階で示された判断の1つに、カリフォルニアで活動するイスラム金融関連書の著者として有名な研究者モンザー・カーフ氏によるものがある。同氏はビットコインについて、価格操作に対する脆弱さはあるものの、イスラム法における正しい価値媒介手段であるとした。

 HSBCアマナーのマホメド氏によれば、その後、南アフリカのイスラム法学者が「社会的に容認され、一般的に用いられている」として仮想通貨に好意的な判断を下しているという。

 ところが10月、ダーバンに本拠を置くダルール・イーサン・センターが、ピラミッド・スキーム(マルチ商法)の可能性を懸念し、仮想通貨の承認を見送った。トルコ、インド、英国のイスラム法学者のなかにも許容できないとする判断が見られた。エジプトのイスラム教最高権威者「大ムフティ」が1月、仮想通貨の取引禁止を宣言した。

 マレーシアに本拠を置く国際イスラム金融シャリーア研究アカデミーのファルク・ハビブ研究員によれば、論争を複雑にしているのは、デジタルコイン、あるいはトークンは何百種類もあり、流通やマイニング、取引に関してそれぞれに独自の特徴を持っていることだという。

「仮想通貨は、その原資産となるコモディティやプロジェクト、事業という点で非常に異なっているため、シャリーア上、すべての暗号通貨に関する包括的な判断を下すことは適切ではない」とハビブ氏。

 同氏は、シャリーア遵守という基準で仮想通貨を分類するプロジェクトに参加している。「これまでのシャリーア上の判断は、ビットコインだけを対象としているか、それぞれの特徴を無視してあらゆるタイプの暗号通貨を対象としているか、いずれかだ」