「予算の前ふり」に役割は低下――。

 政府は6月27日の臨時閣議で、「骨太方針2008」を決定した。いまさら説明するまでもないが、この骨太方針は政府の経済財政運営の方針を示す文書で、小泉政権時代の2001年に初めてつくられたものだ。それ以後、首相を議長とする経済財政諮問会議が毎年6月前後に策定、次年度の予算に反映させている。

 筆者はこのネーミングの語感がいまひとつ好きになれないが、福田首相も、別の理由でこの名前が嫌いではないだろうか。「骨太」という言葉が重荷になっているように感じて仕方がない。閣議決定までの経緯と中身を報道で見る限り、「骨太方針」は、印象として予算交渉の“前ふり”程度のものに後退しつつある。すなわち、この方針に書き込んでおくことが後の予算につながるという前提で、予算の事前協議的な話し合いを行うだけの場になっている。今や、「骨太方針」に、将来の経済政策をリードするというニュアンスはない。殊に現在の福田内閣は、経済政策として何をしようとしているのか、方針が見えにくい。

 とはいえ、予算に影響するなら、国民として骨太方針を無視も出来ない。今回は、骨太方針2008年の中身を見てみよう。

社会保障費の抑制方針は
結局「間違い」だった

 骨太方針の骨子として掲げられているものはたくさんがあるが、注目点は二つだ。一つは社会保障費の抑制方針。もう一つは消費税率の引き上げ問題だ。

 まず、社会保障費の抑制方針は、2006年の骨太方針で決まった。向こう5年間で実質1.1兆円、年間2200億円の社会保障関連の支出を削減することを目標に掲げている。ただ、高齢化が進行する一方、医師不足や救急医療の崩壊が深刻化する中で、そもそもこの方針自体が限界ではないかという声もあり、軌道修正を図るのかどうかが注目されていた。

 結局、この2200億円削減の方針は、建前として引き続き堅持することが決まった。しかし一方で、医師不足や高齢者問題、救急医療については別枠の予算で対処する方針を示しており、実質は骨抜きといっていいだろう。