高機能なオフィスビルが増加している近年、既存オフィスビルの老朽化や賃料高騰、また自社の業態変化などを背景に、オフィスの移転を考える企業は少なくない。そこで、”ファシリティマネジメント(以降、FM)”の第一人者のひとりである古阪幸代さんに効果的なFM戦略とオフィス移転のあり方について伺った。

社員の生産性を上げ、企業価値を高める「最新オフィス戦略」とは古阪幸代
働き方改革・ワークプレス戦略コンサルタント。フルリエゾン代表、WFM(Women’s Facility Management)代表。コーネル大学FM専攻修士課程修了。富士銀行(現・みずほFG)、日本NCRを経て、1999年コンサルタントに転身。Gensler ストラテジックプランニングディレクター、インターオフィス社長、明豊FW執行役員コンサルティング部長、三機工業ワークプレイス戦略専門部長を歴任し、2015年より現職。文部科学省、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)、日本オフィス学会等の各種委員を務める

「オフィスの移転は、ビジネスや従業員の意識を変革する最大のチャンス」と、ワークプレイス戦略コンサルタントの古阪幸代さんは話す。

「ところが、多くの企業がその好機を活かし切れていない。これを成功させるには、ファシリティは企業そのものと捉えて、戦略的、かつ計画的にマネジメントすることが必要です」(古阪さん。以下、同)

 古阪さんによると、FMとは「ヒト・モノ・カネ・情報に続く第五の経営資源であるファシリティ(建物や設備、内装、什器など)を、他の4つの経営資源とともに、その企業の経営戦略に合わせて、効果的・効率的に計画し、運営していく経営手法」。

 その起点は建物や設備ではなく、そこで働く“人”であるべきだ、と古阪さんは訴える。

「少子高齢化が進む日本では、労働人口の減少が必至です。つまり、企業の経営戦略を実現するためには、従業員を会社の“宝”と考え、彼らが最大限の力を快適に発揮できる環境を、持続可能なかたちでつくっていくべき。これを支える手法がFMであり、従業員の働き方をどう変えるかもその一環といえます」