朝原 でも、残念ながら加齢していくので、「加齢との戦い」というテーマがのしかかってきます。特に、僕は高校から陸上競技を始めたので、経験も少なかったし、専門的な指導者がついていたわけでもなく、試行錯誤しているうちに遠回りをしていました。だいぶわかってきた頃には、もう20代半ばから後半になっていました。

朝原宣治(あさはら・のぶはる)
1972年、兵庫県生まれ。高校時代から陸上競技に本格的に取り組み、走り幅跳び選手としてインターハイ優勝。同志社大学在学中に、国体100mで10秒19の日本記録樹立。 大阪ガス株式会社に入社、ドイツへ陸上留学。初出場の1996年アトランタオリンピックの100mで準決勝に28年ぶりに進出。4度目の参加となった2008年北京オリンピックの4×100mリレーでは、36歳にして悲願の銅メダル獲得。 2010年に陸上競技クラブ「NOBY T&F CLUB」を設立。自身のキャリアを活かした社会貢献活動に取り組んでいる

小室 その年齢で、もう遅いという認識なんですね。

朝原 そう。しかも27歳で足のくるぶしを骨折してしまったんです。その年齢は、その先を目指すか引退するかを考える時期なんですけど、僕の場合はケガをしたので、もう一度自分を見直しました。

小室 見直すって、どういうことですか?

朝原 ケガをしたのは、やっぱり休息が取れていなくて、トレーニングの負荷のかけ方が間違っていたということ。若いころなら回復できたのが、加齢によって回復できてなかったことに気づいたんです。

 本当はもっと早く休んだり、体をメンテナンスしたりしなければいけなかったんだけど、とにかく「世界のトップに行きたい」という思いが強くて、休むのが怖かった。

「疲れ」を「甘え」と考える人は
怖くて仕事を休めない

小室 これは、ビジネスパーソンにも共通することですね。ずっと職場の席に居ることで頼りにされてきた感覚を持っている人は、席から離れると自分が必要とされなくなる恐怖を感じて、休暇が取れない。「疲れ=甘え・弱さ」と考えているので、なかなか自分の疲れを認められない。「時間的な負荷をかけないと成長しない」「寝不足状態で、栄養ドリンクを飲みながら頑張れば壁を越えられる」といった感覚で無理を重ねてしまい、心身ともに不調を来してしまう。

朝原 僕もケガをする前は、「練習量」にこだわっていたんです。コーチが年間計画を立てて、それを月ごと、週ごとに割って「今週はこういうメニュー」という具合に選手に渡す。でも、コーチがノってくると「じゃあ、もう1本行こう!」みたいになって、結果的に1日の練習量が増えてしまう。若いときは慣れればこなせるし、それで成功していたから、いつの間にか休めなくなっていたんですね。