三菱重工を悩ます「安倍案件」、トルコへの原発輸出に暗雲2013年5月、安倍晋三首相(左)とトルコのエルドアン首相(現大統領)が会談。両国政府はシノップ原子力発電所プロジェクトの推進等について合意した Photo:AP/アフロ

 三菱重工業内で、また一つアラートが鳴り始めた。「アトメア1」の採用を前提に計画が進められている、トルコにおけるシノップ原子力発電所プロジェクトだ。

 アトメア1は、米原発大手ウエスチングハウスを東芝に買い負けた三菱重工が同連合に対抗し、仏原子力大手アレバ(現フラマトム)と合弁会社をつくって開発した新型の中型炉だ。

 もともと、シノップは東芝が東京電力と組んで受注を目指していたが、福島第一原発の事故で混乱を来した東電が計画から離脱し、三菱重工に商機が訪れた。プロジェクトが実現すれば、アトメア1にとっては記念すべき初の受注となる予定だ。

 しかし、事はそううまくは運ばなそうだ。三菱重工とトルコ発電会社(EUAS)が中心となって進めるフィージビリティースタディー(FS。実行可能性調査)が遅れているのだ。今年3月末までに終わらせるつもりが、今もって終了していない。