無能なリーダーの条件を尋ねられたとき、どんなイメージがわくだろうか。高圧的な態度をとる、事細かに管理するなど、さまざまだろう。だが、そこで見落とされがちなタイプがある。それは、チームに精神的にコミットしていない「不在のリーダーシップ」を実行するマネジャーだ。このタイプは組織で目立たず放置され続けるという点で、欠陥が明白なマネジャーよりもやっかいだと筆者は言う。


 ある若い友人が最近、こう漏らした。これまでで最悪だった上司は、フィードバックをくれる際に、「きみは素晴らしい仕事をしている」という言葉を常に入れていた、と。

 だが両者とも、それが真実ではないことを知っていた。組織は混乱しているし、離職者数はあまりに多く、顧客は満足していなかった。友人は全力を尽くしていたが、いま以上のサポートと、よりよいフィードバックを欲していた。必要なときにそこにいてくれて、口先だけの言葉ではなく実のある助言をくれるリーダーを求めていたのだ。

 彼のうっ憤は、次の言葉によく表されている。「空虚な誉め言葉をくれるよりも、むしろ怒鳴りつけてきたり、非現実的な要求をしてくれたりする上司のほうが、まだよかったよ」

 マネジメントの欠陥――別の言葉で言えば、リーダーシップの負の側面については、長年にわたり研究がなされている。悪しきマネジャーの主な欠陥の特徴についてはたくさんの報告があるが、大まかに3つの振る舞いに分類される。

 1.疎外的
 過剰な情動、コミュニケーションの減少、信頼をむしばむ懐疑心などによって、他者との距離を広げる。

 2.攻撃的
 他者を押さえつけて操りながら、自分の力を強化する。

 3.迎合的
 ご機嫌取りをする、過度に同調するなど。リスクテイク、チームのために立ち上がる、などの行動を嫌う。

 一般のメディアには、政府や学界、ビジネス界におけるこのような特徴を持つ悪しきリーダーの例があふれている。

 しかし、先述の私の友人が説明したのは、こうした無能な上司よりもさらにやっかいなタイプだといえる。

 彼の上司は、明らかな問題行動を起こすわけでも、怒鳴り散らすわけでもなく、自己愛の強い反社会的人間でもない。だが、リーダーとは名ばかりで、その役割にもかかわらず、リーダーシップをまったく発揮していなかった。友人が経験していたのは、「不在のリーダーシップ(absentee leadership)」なのである。そして残念ながら、これは彼だけの話ではない。