現在、現金は家にまったくない。食料や生活のための最低限の買い物は、カードが使える店でショッピング。綱渡りのような生活を続けている。

 それでも、母親は息子をこう思いやる。

「家を出て、当面の生活ができるようになるまで、どうしたらいいのか。どなたかに現状を知ってもらわないと、不安で仕方がないんだと思います。お金を工面してくれとか、そういうことではないんです。私にも息子にも、そんな気持ちは一切ないんです。でも、どなたに相談すればいいのか…」

苦労をかけた母親のために自立したい
そんな気持ちを裏切る「40歳の壁」

 すでに40歳を超えるAさんの場合、国が定める支援のセーフティーネットから外れている。

 近くの公的機関のサポートセンターにも相談に行った。

「いちばんの悩みは、お金がないことなんです」

 Aさんが、自立するためのノウハウをそう聞くと、
「それは仕事を見つけて、働かないと、ダメですね」
と返され、ああ、言わなければ良かったと思った。

「そこまでしか行かない電車みたいなものだ」

 終着駅から先は元々、線路がないんだから、仕方がないと、Aさんは自分の中で処理している。

「うちが経済的に破たんしてしまったのは、僕と父親のせいなんです」
と、Aさんはいう。

「母は一生懸命、生活費をやりくりして、家を守ってきました。それを僕と父が食いつぶしてきてしまったんです」

 Aさんが都会へ仕事を探しに行きたくても、その交通費さえままならない。

「僕が家を出るだけでも、相当な生活費が浮きます。そういうやり方しか、いまの僕にはできない。それに、僕自身、物心ついたころから、父親を『父親』だと思ったことは一度もありません。そういう意味でも、一緒に暮らしていれば、気持ちもすさんでいきます」