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アナリティクスからAIへの進化で
ビジネスはどう変わるのか

――SASインスティテュート年次イベント・現地報告

末岡洋子
【第172回】 2018年4月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
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サッカー選手はボールを保持していないとき
どんな動きをしているか

SciSportsの創業者兼CEO
Giels Brouwer氏

 イベントでは、SASのアナリティクス、AI技術を利用した事例が紹介された。例えばオランダのスポーツ分析ベンチャーSciSportsは、「SAS Viya」に、データマイニングと機械学習、ビジュアルアナリティクスなどの技術を組み合わせ、20万人のサッカー選手のパフォーマンスを分析した「SciSkill Index」を作成している。毎週210リーグ・約1500の試合を分析しているという。

 同社が現在開発中の新サービス「BallJames」は、スタジアムに設置した14台のカメラからの映像を利用してピッチ上のあらゆる動きを捉えてデータにする。具体的には、SASのイベントストリーミング処理技術を利用し、映像から3Dデータを自動で生成し、選手の動き、パスの方向とスピード、ボールと足との間隔、走行、ジャンプといったデータを出す。これにより、ボールを保持していない選手の動きもわかり、選手の評価の精度を上げることができる。

 BallJamesは現在、最初のスタジアムに設置を終えたところで、今後拡大していく予定だ。「ファンはサッカーの試合と同時に、リアルタイムのデータインテリジェンスを楽しむことができる」と最高経営責任者のギールス・ブロウワー(Giels Brouwer)氏は述べる。

SciSportsによるサッカーのデータ分析デモの様子

 「サッカーファンでデータギークだった」ことから、あらゆるプレイヤーのプレイクオリティがわかるインデックスを作ろうとSciSportsを起業したブロウワー氏は「SASの技術なしには不可能だった」と述べる。ファンだけでなく、スカウト、チーム、選手などがデータを利用でき、例えばオランダのあるサッカー選手はSciSportsのデータで自分の実力を実証することでチームに入団、その後も活躍を続け、ナショナルチームのU21にも選ばれたという。データの裏付けがなければ、彼はスカウトの目に止まらなかったかもしれない。

銀行ATMの紙幣切れを
AIを使って予防

 顧客数400万人以上、シンガポール最大の銀行DBS Bankは、世界一忙しいATMに認定されたATMを含む1100万台以上のATMを設置している。月間の取引は2500万回。顧客体験改善のため、ATMの紙幣切れをSASの需要予測技術を使って防ぐことに、各ATMの引き出しデータなどを分析した。その結果、紙幣切れは80%削減でき、2017年には初めて、年間で1台もATMの紙幣切れがないという目標を達成した。また、紙幣補充プロセスの最適化も行い、年間で顧客の待ち時間を3万時間以上削減できたという。

 同行はATMネットワークの最適化に加え、詐欺やリスクの分析、顧客にパーソナライズしたオファーの提供、離職など人事と広範囲にデータを使っている。それまでバラバラで時に対立することもあったというデータ関連のプロジェクトを管理する専門組織を1年半に立ち上げ、最高アナリティクス責任者を設けた。

 最初の最高アナリティクス責任者に就任したサマー・グプタ(Sammer Gupta)氏は、「データファーストの銀行を目指している。製品設計、顧客体験、従業員の日々の意思決定でデータを最優先させる」と述べる。今後は、「これまで閉鎖的で保守的だった」データへのアクセス提供など、デジタル化を進めていくというが、成功のポイントとして「カルチャーの変化」を挙げた。「データとアナリティクスを使って業務を変えるというというマインドセットなしにはうまくいかない」と述べた。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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