銀行員が生き残る道は、金持ち客を抱えて他人に渡さないことだ

新しい銀行店舗

 銀行員を含む全ての金融マンに浪川攻氏の近著『銀行員はどう生きるか』(講談社現代新書)をお勧めしたい。

 著者の浪川氏は、1980年代から金融業界を取材されているベテランの金融ジャーナリストで、筆者は個人的に存じ上げている。

 筆者が浪川氏と会ったのは、筆者が信託銀行に勤めていた1980年代後半だった。1991年には『週刊金融財政事情』の記者だった浪川氏に、信託銀行のファンドトラストにおける利回保証と、ファンド間の利益移し(共にもちろん違法である)の問題をどう告発するかについて相談したことがある。

 その後、浪川氏は東洋経済新報社の記者に転じて、長く金融業界の取材に携わった。同社の看板商品である「東洋経済会社四季報」でも、多くの銀行の取材と記事を担当されていたと記憶する。思い起こすと、山一證券に勤めていた筆者に、「山一自主廃業」のニュースを最初に知らせてくれたのも浪川氏だった。

 さて、『銀行員はどう生きるか』とはストレートなタイトルだが、この本で浪川氏は、日本の銀行業界がどのような苦境にあるのかというよくある話だけではなく、主に米国の銀行ビジネスの展開を参考に、日本の銀行がどのような方向に変化していくといいのかを論じている。