部下に侮辱的な振る舞いをした上司は、その後、罪悪感の「償い行為」として支援的な態度を見せる傾向がある。筆者らの研究によって、そんな興味深い結果が示された。上司に侮辱された時、感情に任せて退職や報復に踏み切る前に、それを利用するほうが得策かもしれない。


 職場で上司との苦々しいやり取りを経験したことのある方は多いだろう。たとえば、人前で怒鳴りつけられたり罵倒されたりする、相当の尽力や残業を要した仕事に対する称賛がない、過去の過ちについて屈辱を受ける、などだ。このような経験は、よくても苛立たちと意欲喪失、最悪の場合には生産性の低下や、退職の決意までも招きうる。

 だが、部下を不当に扱った後の上司自身の胸中について、考えてみたことはあるだろうか。上司の振る舞いの変化に気づいたことは、あるだろうか。

 上司は怒りを爆発させた後、まるで何もなかったかのように装う、あるいは怒りを遠回しに部下のせいにする、などが容易に考えられる。上司の場合、職場での権威によって、部下に対する不当な行為を正当化したり言い訳したりするのはたやすい。

 しかし、我々が『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』に掲載予定の一連の研究からは、必ずしもそうとは限らないことが明らかになった。後悔し、償おうとするリーダーもいるのだ。