あなたは職場で「根回し」をしたことがありますか?

 根回しとは、本来、会議などで議論して決めることを前もって関係者に伝え、さらに意見を集約させてしまうことを狙った行為です。いかにもホンネとタテマエのある日本的な行為のように思えます。ただ、こうした根回しによって会議などが効率的に運営されているとも言えるでしょう。

 もちろん、根回しをする機会は誰にでもあるわけではありませんから、その方法をよく知らない方も少なくないはず。では、実際に初めて根回しをすることになったら、どのような困難が待ち受けているのでしょうか?今回は、初めての根回しに挑んだある若手社員の苦悩を紹介しつつ、根回しの必要性について改めて考えてみたいと思います。

営業現場から予算管理部門へ異動
突然の「根回し命令」に困惑

「悪いけど、関係者への根回しを忘れずに頼むよ」

 会議資料を必死に作成しているところで肩を叩かれ、上司からこんな指示を受けたのは専門商社に勤務するSさん(28歳)。

 これまでは、地方の工場をまわるルートセールスをしており、営業現場で売上予算に追いかけまわされる立場でした。ところが、突然の人事異動で、営業企画に配置転換。元々このポストに就いていた社員が「海外留学したい」と退職したため、代役で指名されたようです。

 したがって、これまでの「営業企画から予算の進捗状況を詰められる立場」から、反対の「営業部門の予算を管理する立場」になりました。

 日々の業務もこれまでとはまったく違います。そのため、慣れない仕事に一苦労。周辺の先輩や同僚から指導を受けて、必死に仕事を覚える日々を過ごしています。

 ちなみに直近の重要なミッションは
<来期の営業予算を確定させるため、各営業部から来期の売上見込みをヒアリングすること>

 これはSさんにとってはキツい役目でもありました。なぜなら、ヒアリングをした元上司から「来年度は厳しいよ。お前も状況はわかっているだろ」と指摘されると、返す言葉に窮してしまうほど、市況が非常に厳しいからです。それでも、何とか本社の意向と現場の実態を調整して、来年度の予算案が大枠で完成しました。