ちなみに、泉佐野市に本社を置く東証一部上場の大企業としては、唯一、不二製油があるが、「検討もしていないし、市から打診もない」(IR広報部)とつれないものである。

 また市名に支払われる命名権の価値も微妙だ。

 例えば、東京渋谷区が運営する渋谷公会堂は、2006年に5年間4億2000万円で命名権を取得した電通がサントリーに権利を転売し、昨年9月まで「渋谷C.C.Lemonホール」という名称だった。だが、契約継続希望も新規契約希望も無かったため、今は元の名に戻っている。「募集は昨年10月で終わった。応募者がいなかったので、現時点では命名権の募集は行っていない」(渋谷区企画部文化振興課)という状況にある。

 東京都民なら誰でも知っているであろう、渋谷公会堂でさえ年間8400万円で買い手が付かない状況にあって、泉佐野市にどれだけの金額がつくのだろうか。

 市名売却が、例えば香川県の「うどん県」のような自治体の愛称の売却にとどまるならともかく、「命名権販売により、住所や住民票、運転免許証の変更まで行う可能性もありうる」(市民協働課)というような大がかりなものになれば命名権収入よりも、名称変更に伴う費用が上回るだろう。当然、住民の理解も到底得られない。

 余談だが、ネット上では、外国資本が金を出して「独島(竹島)市」や「釣魚台列嶼(尖閣諸島)市」と命名したらどうするのか、という笑い話が飛び交う始末。

 果たして、泉佐野市の命名権売却は本当に実現するのだろうか。前代未聞の画期的な発想ではあるが、難航するのは確実である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)

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