カメラに映るのは歴史的建築物ではなく観光客カメラに映るのは歴史的建築物ではなく観光客 Photo by Konatsu Himeda

“蟻塚”に群がるアリのような人波

 東洋と西洋が行き交い、過去と現在が混ざり合う街──。かつてポルトガルの植民地だったがマカオには、昔からそんな不思議な魅力があると言われ、1999年12月に中国へ返還されて以降、30ヵ所にわたる建造物などが世界遺産に登録された。そんなマカオに、ノスタルジックな気分に浸れればと期待して訪れたのだが、目の前に広がっていたのはまるで“蟻塚”に群がるアリのような人波だった。

 4月のマカオ訪問を前に、筆者は何冊かの観光ガイドを物色した。世界遺産はマカオ半島に集中していることから、セナド広場を起点に街を回るのがいいという。全体にこぢんまりした街なので、じっくりと散策できるのがマカオ観光の強みである。

 ところが、足を踏み入れて愕然とする。決して広いとは言えないセナド広場は、すでに観光客でびっしりだったのだ。より正確に描写するならば、広場に群がる観光客のほとんどが、大陸から来た中国人たちだった。

 広場の三方は歴史的建築物で囲まれているのだが、人が多すぎてまるで視界に入らない。立ち止まれば人にぶつかるから、写真撮影を楽しむどころではない。セナド広場は避けようと、足早に聖ドミニコ教会に向かった。