後悔しないための本の選び方、読み方自分が読むべき本をどのように読んでいくかは、著者に対する感情を一切介入させず、著者の主張を注意深く読み取ることが基本である

要約者レビュー

 本は娯楽と割り切ってしまう。あるいは、本は読まないと決めてしまう。それはその人の自由であり、良いも悪いもない。一方で、本から少しでも多くの事を学び取り、何とか実社会で活かしたいと願う人もいる。そのような人にこそ本書『正しい本の読み方』は最適である。

本には「正しい読み方」がある『正しい本の読み方』
橋爪大三郎、 256ページ、講談社、780円(税別)

 本書は、本を読む理由に始まり、本の選び方、本の読み方と展開されていく。世の中には無数の本があり、手あたり次第読んでいたら人生がいくつあっても足りない。だからこそ、自分はどの本を読むべきなのか、その見極め方を学ぶことは大切だ。さらに、自分の人生を生きるため、自分の頭で考えるために本をどう使うのかということまで、本書はつきつめていく。親しみやすい語り口ながら、本書が目指すべき到達点は高い。

 また、「本は単なる情報の集合体ではなく、1人の人間が相当な時間と労力をかけてでも伝えたいメッセージが詰まった、いわば生命そのものなのだ」という著者の見解もたいへん印象的である。インターネットがこれだけ隆盛している現代でも色あせない、本の価値を改めて認識させられるだろう。

 本を読むことはすなわち生身の人間と付き合うことだといえる。本を読むとは著者と友人関係になること。様々な意見を持つ人々を自分の頭の中に住まわせ、共に生きていくこと。本書は、そんな血の通った読書方法を教えてくれる1冊だ。(二村英仁)

本書の要点

(1) 人の個性は半分以上言葉づかいでできている。自分なりの生き方をするには、言葉の能力が必要だ。言葉の能力を高めるために、本を読み他者の生き方に学ぶことが大切である。
(2) 本には別の本との関連性、ネットワークが存在する。本を選ぶときはまずその本のネットワークの構造を理解し、節目となる本を読むことだ。
(3) 本を読むときは、感情や予断を抜きにして「素直に」読む。すると、頭の中に様々な意見を持った著者が住むようになり、人間的能力が高まる。