企業は、中途採用の社員を採ることに慣れたし、自社から転職で辞めていく社員がいることにも慣れた。加えて、金融業界だけでも、北海道拓殖銀行、三洋証券、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、などの破綻から社員の転職が相次いで、転職が珍しいことではなくなったということの影響が大きかったのだろう。

 もちろん、転職は金融業界に特有のものだったわけではない。ただ、金融業は扱うものが「お金」という汎用性の高いものであり、会社を変えても同じように仕事ができるビジネスなので人が動きやすかった。

 その後、金融業界の転職と並行して、あるいは少し遅れて、製造業やサービス業の転職も増える。近年では、IT系の会社では人の動きが活発だし、保守的な印象だったメディア関係の業界でも転職が増えている印象だ。

 どのくらいが「閾値」なのかは分からないが(直観的には全体の6分の1≒16.7%くらいかと感じている)、一定以上の比率の人が転職を経験したことで、「転職者」が少数者的な印象を持たれることが大きく減ったのだと思う。

副業の受容を早めよう!

 冒頭に記したように、筆者は、転職と同様に副業も個々のサラリーマンの当然の権利であると思っている。

 しかし、自分の次に雇ってくれる会社さえ見つけると、普通は自分でできる転職と異なり、副業に関しては、就業規則で原則的に禁止したり、会社に許可を申請させて許可を得ることを条件づけるような就業規則を持つ会社が多いこともあって、「少なくとも、副業は大っぴらにはできない」と思っているサラリーマンが少なくない。

 仮に会社に報告せず、こっそり副業を行っていて、それが後に露見したサラリーマンは、人事評価上の不利を受けるかもしれないし、職場で悪い印象を持たれるようになる可能性が小さくない。

 もちろん、これまでの日本の会社のサラリーマンにも、小説家、作曲家、大家さんなど副業を持った人がいなかったわけではないのだが、副業で世間的な知名度があったり、少なからぬ収入があったりすることは、残念ながら、少なくとも職場の居心地や人事評価にあって好ましいことではなかった。

 しかし、サラリーマンが副業を持つことは、本人の収入の補完、職業スキルの開発、セカンドキャリアへの備え、マクロ的な人手不足への労働供給など多方面から好ましいことなのだ。全く遅いタイミングながら、政府でさえこのことに気づいたようだ。