グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏。
その圧倒的な経験の全てを込めた新刊『どこでも誰とでも働ける』は、発売直後から大きな話題となっています。

好評だったけんすう(古川健介)氏との対談に続き、ゲストに招いたのは、モテクリエイター・ゆうこす氏。
アイドルグループ「HKT48」を脱退後、「どん底」を経験していたという彼女。しかし、たった2年でSNSのフォロワー100万人を達成し、インフルエンサーとして多くの女子、そして企業から注目される存在になっています。

彼女が誰にも教わることなく体得した新しい働き方は、尾原氏が新刊で「AI時代に最も重要なこと」とした、「自分の好きなことだけをやる」というものでした。
(構成:平松梨沙/撮影:疋田千里)

SNSフォロワー100万人! 元アイドルが2年で「新しい働き方」を手に入れられたわけゆうこす(菅本裕子)
1994年、福岡県生まれ。2012年にアイドルグループ「HKT48」を脱退後、タレント活動に挫折しニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始、「モテクリエイター」という新しい肩書きを作り自ら起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー100万人以上。

“ぶりっこ”だから成功できたSNSマーケティング

尾原 はじめまして。是非ゆうこすさんにお会いしたくて、ぼくから対談をお願いしました。

ゆうこす 光栄です!

——本日、尾原さんは、「Double」という遠隔操作ロボットを利用して、ビデオ通話での参加になります。

SNSフォロワー100万人! 元アイドルが2年で「新しい働き方」を手に入れられたわけ

ゆうこす お会いできてうれしいです……と言おうとしたんですが、ちょっと混乱しました(笑)。

尾原 初めてだと驚きますよね。ぼくは今インドネシアのバリ島からアクセスしてて、世界中を飛び回ってます。日本に来ることもあるんですが、このロボ「Double」を利用すると、世界のどこにいてもリアルで人とも会えるし、仕事ができるんですよ。ほら、自分で前後にも左右にも動けます(ロボットを操作して動かす)。

ゆうこす すごい!

尾原 ゆうこすさんにも面白がってもらえるかな、と思い、今日はあえてDoubleでの対談にしてみました。

ゆうこす だんだん慣れてきました! よろしくお願いします。

尾原 この姿や『どこでも誰とでも働ける』という新刊のタイトルからもおわかりかと思うんですが、ぼくは技術革新の進む中での新しい働き方に関心があるんです。新卒でマッキンゼーに戦略コンサルタントとして入社してから、これまでに12回転職しています。

ゆうこす 12回! 私は、一度も就職したことがないので、「働き方」の話ができるかわからないのですが……。

尾原 いやいや! ゆうこすさんほど新しい働き方を実践している方はいらっしゃらないと思います。アイドル、ニートを経て「モテクリエイター」という新しい肩書をつくりあげ、さらにインフルエンサー、SNSアドバイザーとしても大活躍。20代半ばにして個人事務所まで立ち上げられています。SNSのフォロワー、今何人いらっしゃるんでしたっけ? 

ゆうこす おかげさまで、4月で合計100万人を越えました!

尾原 おそろしい数字だなあ。ぼく、最初に謝りたいことがあって。実はゆうこすさんのことをずっと勘違いしていて、『SNSで夢をかなえる』を読まずにいたんです。

ゆうこす どう勘違いしてたんですか?

尾原 「好きなことで生きていく」商法というか、堀江貴文さんが『好きなことだけで生きていく。』で書いているようなことをなぞった“二匹目のどじょう”狙いだと思ったんです。

ゆうこす あー。

尾原 ぼくもちょうど同じ時期に『モチベーション革命』(幻冬舎)という書籍を出したので、刊行当初から意識してたのですが、「ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方」というサブタイトルが引っかかってしまったんですね。
 だけど、それこそ堀江さんや家入一真さんなどとの対談記事を見かけるようになって、さらにSHOWROOMの前田裕二さんが絶賛しているのを直接聞いて、「おや?」と思い始めたんです。ぼくは、前田さんの人を見る目を非常に信頼しているので、彼が「すごい人だ」と言うなら、これはチェックしないといけないと考えて、本を読み始めたら……めちゃくちゃ面白いじゃないですか! 

ゆうこす よかったです(笑)。

尾原 ユーザー目線だし、非常にわかりやすい言葉で、SNSマーケティングのことが詳細に書いてある。びっくりしましたよ。これはSNSマーケティングの教科書だ!と確信して、かれこれ30人くらいに配っています。

ゆうこす ええっ! ありがたいです。

尾原 今のご時世、SNSマーケティングをやらなくていい企業なんてないですからね。マーケティングに携わっている人間は絶対に読んだほうがいい本だと思いました。

 モテクリエイターを名乗りだしたのって、そんなに前ではないですよね?

ゆうこす そうですね。2016年の頭からだったので、2年ちょっとかな。

尾原 たったそれだけの期間でソーシャルでの影響力をこんなにも大きくすることができたというのは、本当に素晴らしいです。

ゆうこす 自分でもびっくりです。ライブストリーミングで服を売ったり、おしゃれ好きな女の子に向けたECサービスの立ち上げにアドバイザーとして参加したり……。忙しくて充実した毎日を過ごせているのは、SNSのおかげです。

尾原 ぼくはGoogleやリクルートといった会社で働いていて、早くからインターネットマーケティングにかかわってきたのですが、ソーシャルメディアについて、こんなに解像度高く理解している人がいるなんて、と本当に感動しました。本にも、「Twitterは共感と拡散メディアだけど、Instagramは検索と深掘りのメディアだ」なんてことが、さらっと書いてあるし。

ゆうこす それぞれのSNSにあわせた発信をしたほうがいい、ということを、理解していない人は結構多いですよね。

尾原 どうしてそんなに深くSNSを理解されているのでしょうか? アイドルをやっていたから?

ゆうこす アイドル経験以上に、私が「ぶりっこ」であることが大きいです。とにかく人に好かれたい。男女問わずモテたい。
 いつも言ってるんですが、ぶりっことSNSって相性がいいんです。SNSやっていてもったいないなと思うのは、神様目線というか自分本位なツイートばかりしている人を見たとき。

尾原 あー、いますね。

ゆうこす たとえば自分の本が出たときに「ついに発売しました!」とツイートしている人を見ると、「自分のことを佐々木希さんか石原さとみさんだとでも思っているのかな?」と。

尾原 (笑)

ゆうこす 人って、そんなに他人に興味持ってない。よほど相手にわかりやすいように、気になるように投稿しなければ、誰もクリックしてくれない。私は自分がぶりっこで、いつでもモテようとしてきたので、圧倒的に他人目線になれるんです。

「人生100年時代」に必要なのは、分母が1の存在になること

尾原 ゆうこすさんは、最初からモテクリエイターに到達したんじゃなくて、次々と「転職」してるんですよね。
 今回の対談にあたって、ゆうこすさんのツイッターやブログを一通りみたんですけど、ニートになる前は料理タレントにチャレンジしてましたよね?

ゆうこす 恥ずかしい! HKT48を2012年にやめたあと、別の事務所に所属して、一時期料理タレントとして活動していました。SNSアカウントも、元々は@yukos_cookだったのを、@yukos_kawaiiに変えたんです。

尾原 「あんまりうまくいかないかも……」となったときに、やめられるというのが、ゆうこすさんのすごいところなんです。
 ここで、ある本の話をさせてください。ぼくの本でも紹介している、リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』(東洋経済新報社)という本なのですが……。

ゆうこす ちょっと待ってください。難しくなってきたので、対談しながらスマホとかで検索しても大丈夫ですか? 

SNSフォロワー100万人! 元アイドルが2年で「新しい働き方」を手に入れられたわけ

尾原 もちろん大丈夫です! ぼくのほうは、実は自宅で3台のパソコンを駆使しながら対談しています。

ゆうこす ずるい(笑)。

尾原 で、『LIFE SHIFT』ですね。この本のサブタイトルは「100年時代の人生戦略」というんですけど……、ゆうこすさんは、自分の寿命ってどれくらいだと考えてますか?

ゆうこす うーん、80〜90歳くらいでしょうか。

尾原 ぼくが講演する際に質問しても、それくらいの年齢を答える人が多いですね。でも、ゆうこすさんの世代は、たぶん100歳を超えるくらいは生きるんですよ。

ゆうこす ええっ!

尾原 この200年間、人間の寿命はものすごい勢いで伸びてますから。おそらく110歳とか150歳まで生きる人も出てきます。寿命が伸びるのはうれしいことのように思えるけれど、ひとつ大きな問題がある。それは、100歳を越えても、自分でメシを食っていかないといけないということ。
 その歳までずっとバリバリ働けるわけじゃないし、もう10年すると、人間の仕事は半分以上AIに置き換えられてしまうという話もある。では、どうすればいいのかというと、仕事100パーセントではなくて、仕事60パーセント遊び40パーセントのような、創造性があってゆるやかな活動でお金を稼いでいくことになるんです。積極的に公私混同をしていく必要がある。

ゆうこす ああ。「100歳まで仕事しないと!」って言われて、やだな〜と思ったんですけど、わかりました。今の私の活動って、まさに仕事と遊びが混ざってますね。

尾原 人間の仕事はどんどんAIの仕事に置き換わっていくし、インターネットがあるから、人間同士でも、仕事内容がどんどんパクられてるわけですよね。ようは、「専門家」が要らなくなってる。そんな時代にどうやって稼ぎ続ければいいのか? 
 リンダ・グラットンさんはそこで、専門を連続的に変えていくことを推奨しています。真似されるよりも早く、新しい分野にうつりつづけるんですね。そうすると、いくつも専門を持った唯一の人材になれる。いわば「連続専門家」になれ、と言っているんです。

ゆうこす わかる気がします。今のゆうこすは、モテクリエイター、インフルエンサー、SNSアドバイザーといくつかの「専門」を持っていることで、分母が1の存在になれているんです。「この仕事を頼めるのは、ゆうこすだけだ」って思っていただけるところまでようやく来れました。

尾原 SNSを誰よりも深く理解しているうえに、それだけを強みとせず、いくつも肩書を行き来している。ゆうこすさんはまさに「新しい働き方」を実践しているリーダーだと思います。

(第2回へつづく)

尾原和啓(おばら・かずひろ)
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)、Fringe81(執行役員)の事業企画、投資、新規事業などの要職を歴任。現職の藤原投資顧問は13職目になる。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。著書に『ITビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム』(NHK出版)、『モチベーション革命』(幻冬舎)などがある。