前回、次のことを述べた。

 (1)2008年から09年にかけて、経済危機の影響で需要が急減したにもかかわらず、消費者物価は上昇した。

 (2)09年の後半以降、需要が回復しつつあったにもかかわらず、消費者物価は下落した。

 つまり、需要の動向と消費者物価の動向は、正反対だったのである。これは、「需要が不足するので物価が下がる」という考えが誤りであることを、明確に示している。

 消費者物価が上記のような動向を示したのは、ほとんどすべて、原油価格の動向による。しかし、日本の金融政策が原油価格に影響を与えられないことは言うまでもない。このことは、「物価を目標として金融政策を運営する」ことがまったくの誤りであることを示している。

 では、物価は、どのような要因で決まるのか? 以下では、1990年代以降の期間を対象として、物価変動の要因を見ることとしよう。

工業製品価格が下落し、
サービス価格は上昇

 消費者物価指数を品目別に見ると、【図表1】のとおりである。総合指数は、1990年代には上昇していたが、98年をピークとして下落を続けている。

新興国の工業化が物価下落の最大の要因

 品目別に見てまず注目されるのは、財とサービスが対照的な動きを示していることだ。すなわち、財、なかんずく工業製品が90年代半ばからかなり顕著な下落を示しているのに対して、サービスは2004年までは上昇を続けていた。

 具体的に言うと、93年から08年の間に、工業製品は約6%下落したのに対して、サービスは約8%上昇した。消費者物価指数総合は、この15年間で約2%上昇した。