フェンスに囲まれたままの広大な工事現場 Photo by Toshihide Aikawa

 そうした状況下で初登庁した小西市長は、新市庁舎建設工事を請け負っていた奥村組(本社・大阪市)関係者と市役所内で面談し、工事契約の解除を伝えた。契約書第45条の「発注者は必要があるときは、この契約を解除することができる」との規定に基づくもので、小西市長は相手方に「民意による政策変更」と伝えた。

 こうして現市庁舎横で進められていた工事は中止され、資機材などが撤去された。1万2118平方メートルの広大な敷地は周囲をフェンスに囲まれ、地盤改良のために掘られた大きな穴などが残されたままとなっている。

 工事契約の解除は市議会への事前説明なしで実行された。約87億7000万円(税込み)となった工事契約の締結には議会の議決が必要だったが、契約解除には必要なく、手続き上に問題はない。

 だが、近江八幡市議会(定数24で欠員1)議員のほとんどが新市庁舎建設を推進し、市長選でも敗れた現職側に付いていた。その数、なんと18人。彼らが黙って引き下がるはずはない。それに何より、中止した工事現場の後処理や業者に支払う賠償金、さらには現市庁舎の耐震補強や新たな新市庁舎建設計画など、近江八幡市は新たな課題を抱えている。

 小西市長は契約解除後の方針や新たな道筋などを明らかにしておらず、議会側が猛反撃に出るのは必至。この日の臨時会がその第1幕とみられていた。

小西理・近江八幡市市長。東京大学法学部を卒業し、大手民間企業に就職。実兄が衆議院議員(自民党)になったことからその秘書に転身した。ところが、兄の急死で2001年10月の補欠選挙を経て自身が衆議院議員に。当選2回を重ねるが、郵政民営化に反対したことから郵政選挙(05年9月)で自民党の公認を得られず、落選 Photo by Toshihide Aikawa

独断的で拙速との批判

 臨時会の冒頭、小西市長が就任のあいさつをした。憲法の前文を引用する形で、「市政は市民の厳粛な信託によるもので、その権威は市民に由来し、その権力は市民の代表者が行使し、その権利は市民が享受する」と明言した。そして、地方自治法の「最少の経費で最大の効果を挙げる」との規定を引用し、「これを肝に銘じて市政運営に当たりたい」と、決意を表明した。

 臨時会はその後、淡々と議事が進み、何事もなく終了してしまうかと思ったときだった。前市長派の最大会派「政翔会」の井狩光男議員が挙手し、緊急質問を動議した。演壇に立った井狩議員は「われわれ議会は10年にもわたって調査・研究を重ねて、一点の曇りもなく(新市庁舎建設を)議決した。(市長は)市長選で民意が得られたとの一点で契約解除したが、二元代表制の下でいったん決めたことを完遂するのが、議会制民主主義だ」と述べ、「今回の解除は独断的であまりに拙速だ。市長が独断で契約解除した民意の根拠は?」と、厳しく追及した。

 小西市長は「市長選の争点は庁舎問題で、私が出馬したのもそのためだった。1年以上前から市民として問題点を指摘しており、私の独断という批判は当たらない」と一蹴した。そして、「(契約解除の決断が)遅れれば、それだけコストがかさむことになる。一日も早く決断する緊急性があった」と説明し、第三者委員会を設置して奥村組と賠償金額などを協議することを明らかにした。